尼崎ラブ行進曲～しゃぶしゃぶの口

今年になってから

尼崎で交尾をしたのは

5日と14日の２回だった。

交尾？

あーいや

正確には

交わった日と書いて

交日が正しい。

あーいや

大人同士と言えど若い独身女性と
役目を殆ど果たし終えたとは言え
随分くたびれた既婚男性が

気儘に交わるのは
正しい行いとは言えない。

正しいとは言えないが
ただし
お互いに身も心も芯なりそぐえば
それはあながち間違いともいえない。

そぐわっていなければ
それは単なる不貞であり
物々交換に過ぎなくなってしまう。

いつもの十三ての待ち合わせではなくて
この日は
女は会社がお休みで
女の地元の尼崎での待ち合わせになっていた。

男にとっては
空港線塚本から生野高校を脇目に
十三の直中に出向くより

阪神神戸線尼崎東から阪神尼崎に行く方が
距離的にも時間的にも
ありがたかった。

そもそも
たった週一の逢瀬に
少しでも長く会えるようにと
わざわざ女の職場から地元まで
道中数十分のための十三だった。

とはいっても
十三からの2号線は渋滞がおおく
特にこの日の短い通勤帰宅ラッシュは
辛くなっていた。

案の定
尼崎駅前公園とジャンカラの貫道で
思いの外早くついた男は
おんなが現れる待ちの時間を
寧ろ楽しんでいた。

午後６時
ラインが鳴った。

ぴゅ～♪
〈もうすぐ着くよ～♪〉

数分後
濃紺の厚手のコートに
ふかふかのマフラーを
ぐるぐる巻きにした女がやって来た。

女
「ごめん。5分遅刻や」

男
「・・・寒くなったね」

女
「私、今日はしゃぶしゃぶの口になってる♪」

男
「・・・あそこか。
馬刺しと厚切り塩タンできまりやな(笑)」

女が助手席に沈み込んだのを見て
男は車をゆっくり走らせた。

勿論
いつものあの宿へ

・・・・