総じて若くして結婚して離婚に至ったｼﾝｸﾞﾙﾏｻﾞｰの経済状況は苦しいｹｰｽが多い｡幼い子を養う為に母が仕事とは別に売春をしていたとしてもそれを誰が咎める事ができよう｡仮にその母に対し道徳の名のもとに売女､淫売などと唾をはきかける者がいたらそれこそ悪である｡道徳とは時に最も正義に反するものではないだろうか？これとよく類似したｹｰｽであるが敗戦直後の日本は思いの他貧しく､復興もままならない時期は庶民の生活は困窮を極めたようだ｡夫が戦死し残された母と幼い子供｡母はただ一升の米を得る為におぞましい地主に納屋にて犯される｡母にとっては自分自身の尊厳よりも子供の命の方が遥かに大切なのだ｡この崇高ともいえる行為を誰が責める事ができるというのだ？愛する者を守る為自分の誇りを捨てる、これは母の慈愛に他ならない｡売春が道徳や社会規範に反するか否か？これが反するのは間違いないかもしれない｡確かに自らの物欲の為に売春に走る者も少なくはない｡ﾌﾟﾗｲﾄﾞを捨て華やかなﾌﾞﾗﾝﾄﾞを纏ったところでそれは単なる虚飾でしかないのだが…｡しかし時に道徳やモラルは悪でしかないのだ｡いや根底を探れば『貧困』これ自体がこの世で最も強大な悪のなのかもしれない｡貧困が無くなれば世の中で犯罪や戦争は間違い無く激減するだろう｡おそらく大多数の者がはるか昔からこの事に気付きながら未だにそのような社会の確立が実現不可となっている事を鑑みれば､最大幸福社会の実現などただの幻でしかないのだろうか｡『この世に生きる事は地獄を巡るに久しい。しかしだからこそ人生には戦う価値がある。』ヘミングウェイ