人間模様
職場の同僚に、昼休みになると「仏教のありがたい説教」ばかり喋ってくるAさんという人がいる。
たしかにいい話なのだけど、正直いって猛烈につまらない。
「他人の苦しみが分かる人は自分も幸せになれる」なんて言われたって、はァそうですかとしかコメントのしようがないではないか。
せっかくの昼休み、こちとらその場に居ない人の悪口で盛り上がろうと思っていたのに、これでは興ざめである。
おまけにAさんは、ありがたい説教を一方的にしゃべるばかりで、相手の話をちっとも聞こうとしない。
それでいて本人は「みんなのために素晴らしい話をしてやってるんだ」と思っている風であるから、もうどうしようもないなと思うばかりである。
こんなやつに他人の苦しみ云々言われたかない。
ただ、こんな困ったAさんをめぐる周囲の人間模様は、見ていて結構おもしろい。
・総務のBさん(正直者):すっげー退屈そうな表情で「あーそう」と、猛烈にどうでもよさそうな相槌。
・営業のCさん(口上手):「へーAさん、さすが悟ってますねえ!」と、がんばって調子のいい相槌。
・営業のDさん(マイペース):会話に参加せず、黙々と雑誌を読みふける。
・当のAさん(説教マン)は、自分のことを「みんなのヒーロー」だと勘違いしているわけだが、それはさておき。
営業のCさん(口上手)もまた、自分のことを「Aさんのつまらない話を親切に聞いてあげてるヒーロー」だと思っている節が感じられる。
しかし、同席しているBさんもDさんも、こんなCさんに哀れみの表情を投げかけるばかり。
傍から見たら、調子よく話を合わせてるせいでAさんから集中攻撃されているCさんは、「スケープゴート」以外の何者でもないんである。
「自称ヒーロー、他称スケープゴート」
こういう人がいちばん可哀相だと心から思います。
Cさん、なんだかしんどそうだし。
ちなみに俺は、「ニコニコと偽善の笑みを浮かべながら、ひそかに観察して味わう」派です。
最低、の一言に尽きると思います。