炎
職場でちょくちょく行う計算業務がある。
これまではみんな電卓を叩いて手計算していたのだが、パソコンが得意な社員F君が、イントラ上のウェブページに計算処理フォームを作成してくれた。
ここに数値を入力して実行すれば、煩雑な計算を瞬時にして行ってくれるのだ。
で、これは便利だというので社員の多くが使い始めたわけでありますが。
このフォーム、F君が仕事の合間に趣味で作ったものながら、「計算を実行すると炎が燃えさかる動画の中、回転しながら数値が現れる」という凝った設定になっているのだった。
もちろん彼なりの冗談なのだが、社員たちにとっては計算値さえ分かればいいのであって。
その結果、「燃えさかる炎から回転しながら出てくる数字」がごく当たり前のようにパソコン画面に登場するようになり。
でも、このことを誰も気にしない。
「数値さえ分かればいい」という合理主義の中では、「なんで炎が現れるわけ?」という素朴な疑問さえも出てこないのだ。
一方F君のほうも、いまさら作成しなおすのも面倒なのか、そのまま放置して我関せずである。
定型業務なだけに、うちの職場では数年後もこのフォームが使われ続けているんだろうなァ。
これから入ってくる新入社員たちもきっと、先輩から当然のように、「このフォームを使うといいよ」と教えられることだろう。