生きるって難しい
職場の先輩へのギフトを買いに行った。
後輩数人(自分を含む)からのお祝いで、住んでる場所がデパートに近いからという理由だけで俺が買いに行くことになったのだが、品物を選び終わって「のし」を付けてもらう段になってハタと困ってしまった。
数人からの贈答品なので「のし」を連名にしなくちゃならないものの、どういう順番で書いてもらえばいいか皆目分からないのだ。
背に腹はかえられないので、恥を忍んで店員に訊ねてみた。
俺: 「これって連名のとき、どういう順にするもんなんですかねえ?」
店員: 「そうですねー。年齢順に右から書いていくの一般的でしょうか」
なるほど、じゃあその通りにしてください。
というわけで、右から順に「ノッチ、○○、△△、××」と書いてもらったのでありますが(後輩の中では俺が最年長だった)。
ここでふと気がついた。
年齢順ってことは年功序列ってことだろうから、自分は謙遜して最後に持ってくるべきではないか。
こうするのが我が国の美徳ではあるまいか。
このままでは末代の恥だと大焦りして、あわてて店員に申し出た。
「よく考えたらぼくが最年少でした。ノッチを最後にしてください!」
なにをどうよく考えたら年齢が入れ替わるのかよく分からないが、ともかくこのように書き直してもらったところ。
今度は別の不安が募ってきた。
年齢順に書くのが一般的なのに、自分の名前だけのうのうと最後に持ってくるなんて、年齢詐称に他ならないではないか。
後輩をさしおいて若ぶるなどこれ、恥の上塗りではあるまいか。
しばらく逡巡したすえ、勇気を出して店員に再び申し出たのだった。
おそるおそる、しかし毅然とした態度で。
「やっぱりぼくが最年長でした……。ノ、ノッチを最初に戻してくださいっ!」
店員はただただポカーンとこちらを見つめたまま、俺の指示どおり書き直してくれた。
ああ、これでいいんだ。
事実どおり自分が最年長ってことでいいんだよ。
うん、うん。
うーん、本当にこれでいいんだろうか。
ああ、また分からなくなってきたよ!!
…と頭がぐるぐるし始めて。
「やっぱり4人の名前を円形にならべて書いてください」と喉元まで出かかったのをグッとこらえた。
生きるって難しい。
コメント
2020/05/25 6:51
1. 何事も勉強ですね
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