絵画
勤務先の会社に新しい営業所がオープンすることになった。
というわけでレイアウト組みや掃除などを手伝いに行ってたのだが、その際、俺の油絵作品を持参した。
「新営業所に飾る絵画などをお持ちのかたは是非ご提供ください」という連絡が事前に回っていたので、恥ずかしながら飾ってもらおうと思いついたんである。
だが、営業所に行ってみて愕然とした。
部屋には既に有名画家のレプリカが飾ってあったのだ。
うわー、なんだよこれ!
オレの絵を飾るスペースなんてないじゃねえか!
絵を提げて呆然と立ち尽くしていたら上司に声をかけられた。
上司:「キミ、絵を持ってきてくれたのかね」
俺:「ええ…。でも、もう飾るところなさそうだしいいです」
上司:「まァそんなこと言わずに。どんな絵なのかね? …おっ、いい絵じゃないか!」
俺:「いいですよもう」
上司:「そうだ! ちょうどトイレに飾る絵がなかったんだよ。これ飾ろう!」
…というわけで、俺の絵はすぐさまトイレの壁にかけられた。
上司や同僚たちからは賞賛の言葉の数々。
「いいねえ、ピッタリだよ!」「トイレに合うよねー」「トイレにピッタリだよこれ!」。
俺の絵はトイレにピッタリだったのか。
東山魁夷もきっと「先生の絵、トイレにピッタリですよ!」なんて言われてたに違いない、と自分を納得させてみる。