とり憑かれる
50代後半  北海道(道北)
2018/07/21 14:02
とり憑かれる
昔、会社の上司にいわゆる見える人がいた


ある日その人と2人きりで

隣同士で仕事をしていた


当時、俺は2交代勤務で

その日は1人で夜勤だったのだが

たまたま日勤の人間が休んでしまい

仕事がたまっていたので

上司がかなり遅くなるまで

残業で残っていた

実は彼の奥さんも見える人らしいのだが

2、3日前の休み時間に

会社に上司の弁当を届けに来ていて


俺が「こんにちわ」

と挨拶すると

軽く会釈を返してくれたが


目が合うなり

驚いた様な表情で俺を見て

逃げる様に行ってしまった


突然の事で

何が起こったのかよくわからず

ちょっと呆気にとられたまま

彼女を見送った


その時の話しを

ちょうど二人きりだし

仕事をしながら上司に話してみた


すると上司は

誰も居ないのを確認するように辺りを見回し

「嫁さんが言うには・・

安礼さんは強い憑依体質だから

いわゆる霊場的なところには

絶対に行っちゃだめ
なんだって・・」


んっ?

霊場?

昔、免許取りたての頃

みんなと同じように

あちこち行きましたけど・・


という事は・・


この間あんな顔して俺を見てたのは

俺を見てたんじゃなく


「取り憑いた何かを見てた」


って事?


とはさすがに気味が悪くて聞けずに

曖昧に頷いて

そのまま二人で仕事をしていた



しかし本当にやばかったのはその後で・・


本当に未だに、なぜ彼があの時その話しを

俺にしたのかわからないんだが


とりとめもない会話の中で


「そういえばさぁ

この前ちょっと嫌な事あってさぁ・・」


と上司が話しはじめた


「嫌な事?」


と、ちょっと何か本当に嫌な予感を感じながら

俺は仕事をしながら聞き返した

「うん・・

この間の休みに温泉に泊まりに行ったんだけど

前の日、出発遅れて 夜、遅くなっちゃって

焦って車走らせてたらさぁ

突然、目の前に狸が飛び出して来て

避け切れなくて

ひいちゃったんだ・・」


その言葉をどこか上の空で聞いていた俺は


仕事をしながら


「可愛そうに・・狸、死んじゃったんだ

痛かっただろうになぁ

可愛そうに・・」


と心の中でそう思っているうち

涙ぐみそうになった

と!

その瞬間!


右肩が、まるで誰かに思いっきり

上から押さえつけられてる様に

ありえないほど重くなりはじめた


「なんだこりゃ!」


どんどん重さが増してゆく中で

座って仕事をしていた俺は

いつの間にか

床に片膝つきの状態になりながら

必死に上司に向かって


「ちょっと!ちょっと!

すいません!その話し止めてもらえます

思いっきり肩重いし痛いんですけど・・」


と仕事そっちのけで訴えた

「肩が?

ごめん大丈夫か?」

そう言って

上司が肩に触れた途端

ありえないほど重かった肩の重みが

すーっと消えた


その後、色々と聞いたはずなんだけど

なぜかよく覚えていない・・


その上司はそれからしばらくして会社をやめた

それ以来、1度も会っていない


もしかしたら彼は

嫁さんから聞いた俺の憑依体質を

何となく試したのかもしれない・・

なぜかはわからないが


俺が彼に聞いて

あーこの人本当に見えてるんだな

と思った一番ゾッとした話しは


普段車を運転していると

道路の水溜まりに人の顔が見える事があるらしい

それは何かが写ってると言う感じじゃなく

水溜まりの中から

はっきりとこちら側に

顔を出しているという状態だと言う

通り過ぎる時

じーっと目がこちらを睨んでいるそうだ


たまに気付かずに真上を通ってしまうと

うめき声が車の下から聞こえて来るそうだ























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