いつか きっと(2)~昭和という時代に
男が生まれたのは
昭和40年(1965年)
戦後20年、高度経済成長まっただ中だった
世間は右肩上がりの景気に浮かれまくっていたが
男の生家の周囲はどこかほのぼのとして
まるでお祭り騒ぎとは無関係な
雰囲気の中にあった
それもそのはずで
男の父は国家公務員で
彼が生まれたのは
国家公務員宿舎だったのだ
目の前に広大な敷地を持つ駐屯地をのぞむこの辺りの土地は
明治以来、国の管理下に置かれていた
自然、近所も公務員が多く
景気とは、基本的に関係の無い給与体系の中で生きる彼らは
いい意味でも、悪い意味でも、世間とは一線を画していた
そんな静かで、どこかほのぼのとした雰囲気の中に生を受けた彼だったが
生まれて何年もしないうちに
彼のまわりの平和な世間は
彼の突飛な行いのせいで
少なからず、波だって行く事になるのだった・・・