小泉八雲日記[8]~むじな~多分人を化かす狸のたぐいかな?
50代前半  岡山県
2012/03/07 18:44
小泉八雲日記[8]~むじな~多分人を化かす狸のたぐいかな?
「これこれ、お嬢さん、
こんな夜遅くにいったいどうしたんだい?」




時は、江戸時代、


夜更けの寂しい坂道で、


一人の商人が、


道端に独り泣いている若い女性の後ろ姿を見つける。


「もし困り事なら私が相談に乗るよ。」


「それに、ここは物騒で有名だから、女が夜一人でいるような所じゃねえ。気をつけなきゃ危ないよ」


それでも泣き止まない彼女に


商人が近寄った途端、


彼女が、こちらを振り向いた。


が、その顔には、


なんと、目も鼻も口もなかった!


「ひええっ[あせあせ(飛び散る汗)]


商人は、悲鳴を上げて、坂を走った!


暗闇の中、どれだけの距離を逃げたか、


しばらくすると、


闇に、ぼんやりと小さな一つの灯りが、見えた。


彼はそこへ助けを求めようと必死に駆けた。


近づいて見ればそれは、


蕎麦売りの屋台の小さな提灯の灯りだった。


商人には、それでもありがたく、地獄で仏に出会った心持ちで屋台に駆け込んだ!



[時計]



[時計]



[時計]



皆さん、こんばんは[三日月][わーい(嬉しい顔)][exclamation]


有名なハーンの怪談の中の
「むじな」
の場面です。


この話は多分、怪談をモチーフにしてますが、


本当にゾッとするドロドロストーリー集の中に、一服の笑い話を交ぜた印象があります。。


しかしハーンは、


元々ユーモアセンスはあまり良くなかった人でした。


特に、人を貶める笑い、ブラックジョークは絶対しなかったと思います。


前回の話で、自分の片方の目がネタにされたことは、傷つくのが自分だから笑いで許せたのでしょう。


さて、このむじなストーリーなんですが、


静かで平和な日本だからこそ、何とか成立した筋と言えます。


これがハーンが青年期を過ごした19世紀後半(南北戦争終了間もない)のアメリカならば、


のっべらぼうの出番前にかなり無理が生じます。


まず物騒な人気のない場所にうら若い女性が一人でいれば、


たちまち強盗か性犯罪の餌食です。


ゆえにハーンは、商人が女性に声をかけた場面で、


「※彼はまっとうな人間だったので、親切心からそう言ったのである。」


と英文の読者のためにわざわざ注釈を加える必要があったんです。(笑)




また欧米人が、銃やナイフの脅威と同様に、のっぺらぼうに悲鳴をあげ逃走するほど怖がるかも疑問。


また、のっぺらぼうが白人なのか黒人なのかもこだわるかもです。。


さらに、商人が駆け込んだ蕎麦屋ですが、


夜の屋台って屋外の自販機同様、今でも欧米ではそうあるものでないらしく。


やはり物騒過ぎて商売として危険だからでしょうね。


屋台と言えば、


実はハーン自身も、来日する前に、軽食の小店を出した事があるのです。


料理を5セント均一で食える店、という着眼点はなかなか良かったのですが、


仲間に金を持ち逃げされすぐに潰しました。


ちなみにその店の名は、


Hardtimes(不景気)
だったそうです。


仲間を信じすぎるトコや命名時点で、彼には商売のセンスなかったんだなと感じました。



夜道で泣きそびれる若い女性と、


そして夜の屋台の場面、


これが怪談として成立した古き日本は、本当に平和で安全、幸せな世の中だったのでしょう。



[時計]



[時計]



[時計]



さて、


最後にいよいよ話のラストの場面に戻します。




窮地を救われた商人は、


ガクガク震えながら、先ほどの恐怖体験を蕎麦屋のオヤジに話します。


「さ、さっき見た女の顔、そ、そりゃ恐ろしかったことと言ったら、


とても、お、恐ろし過ぎて、それを口じゃ言えやしねえ![あせあせ(飛び散る汗)]


すると、店主のオヤジが、笑ってこう言った。


「へぇ、ご主人、ひょっとしたら、そのさっきの、顔っていうのは、こんなもんじゃなかったんですかい?」


そういってオヤジは、
自分の顔を手でぺろっと撫でた。


すぐに、


そこに
目も鼻も口もないツルツルの顔面が現れ、


それと同時に、
提灯の灯も


ばっと消えた。






商売と、ユーモアのセンスには、
恵まれないハーンでしたが、


ここで話を終わらせるその描写センスは抜群でした。



これ以上のエンディングは、他にありえません!(笑)




今回も、お読み頂きありがとうございます。
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コメント

50代前半  岡山県

2012/04/07 10:26

4. >エイミさん

コメントありがとう。僕も八雲記念館に二度ほど行きました。回りの食堂が混んでいてなかなか食べれなかった!

鯉のでかいのを見てびっくりした記憶が。。

40代後半  岡山県

2012/04/07 1:22

3. 松江城の近くに小泉ハーンの住んでいた家に20代の頃行ったよ。
近くで食べたカモなんうどん美味しかった。

50代前半  岡山県

2012/03/08 8:20

2. >けちゃんたさん

よく、ご存知ですねえ!
記者時代に担当してました。

彼は絵の才能はあったみたいなのですが、ユーモアに強くないため、途中でネタ切れを起こして長く続かなかったという話があります。

しかしハーンの書いた漫画は地元で当時の貴重な資料として扱われてるとか。。

2012/03/07 22:28

1. ユーモアのセンスはあったんじゃないんですか?
新聞の購読者を増やすために、今ではあたりまえにある新聞の4コマ漫画…

本国でハーンが始めたのが最初だと聞いたことがあります…〓

ユーモアセンスが無ければ怪談も書けないんじゃないんですかねぇ…[にこにこ]

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