流れる風景が好きだった…
20代半ば  島根県
2011/03/29 13:42
流れる風景が好きだった…
あの時、好きだった女の子がいた

その記憶は、思い出の奥深くで

雪が降り積もるように、見えなくなると思っていた

真っ赤になった瞳で、無邪気にうなずく少女と再会するまでは…



それは、朝霜の通学路

偶然出会った少女と一緒に、学校への道をただ笑顔で歩いていた


それは、夕やけの射す駅前

赤く染まる場所で、ベンチに座る少女が顔を上げて
遅いっと言って微笑んでいた


それは、夕暮れの商店街


たい焼きをほうばる少女と共に、他愛ない話しに花を咲かせていた


それは、真夜中の遊歩道


未来に託された希望を求めて、少女が最後にすがった場所

どれも失って初めて気づく、かけがえのない瞬間だった





流れる風景が好きだった…


雪の舞う街


新しい足跡を残しながら、商店街を駆け抜けることが好きだった




雪どけの街


木々の幹に残る、小さな雪の固まりを手ですくいとることが好きだった




雪の冷たさを忘れた街


傾けた傘のスキマから、霞む街を眺めることが好きだった




雪の到来を告げる街


見上げた雲から舞い落ちる小さな白い結晶を、手のひらで受け止めることが好きだった



そして、季節は冬…

雪の季節

街が白一色に覆われる季節

流れる風景が好きだった…
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