流れる風景が好きだった…
あの時、好きだった女の子がいた
その記憶は、思い出の奥深くで
雪が降り積もるように、見えなくなると思っていた
真っ赤になった瞳で、無邪気にうなずく少女と再会するまでは…
それは、朝霜の通学路
偶然出会った少女と一緒に、学校への道をただ笑顔で歩いていた
それは、夕やけの射す駅前
赤く染まる場所で、ベンチに座る少女が顔を上げて
遅いっと言って微笑んでいた
それは、夕暮れの商店街
たい焼きをほうばる少女と共に、他愛ない話しに花を咲かせていた
それは、真夜中の遊歩道
未来に託された希望を求めて、少女が最後にすがった場所
どれも失って初めて気づく、かけがえのない瞬間だった
流れる風景が好きだった…
冬
雪の舞う街
新しい足跡を残しながら、商店街を駆け抜けることが好きだった
春
雪どけの街
木々の幹に残る、小さな雪の固まりを手ですくいとることが好きだった
夏
雪の冷たさを忘れた街
傾けた傘のスキマから、霞む街を眺めることが好きだった
秋
雪の到来を告げる街
見上げた雲から舞い落ちる小さな白い結晶を、手のひらで受け止めることが好きだった
そして、季節は冬…
雪の季節
街が白一色に覆われる季節
流れる風景が好きだった…