写真が記憶する時間
タバコを吸いながら革ジャンを着た男。
年齢は今のおれよりきっと若いと思う。
そこに知ってる人は誰1人いない。
ペラペラページをめくる。
見たこともない人。
ぎこちない笑顔のカップル。
不意に撮られて少し変な顔。
どんどんページをめくる。
真ん中に赤ん坊がいる。
きっとこの夫婦の宝物なんだろう。
どんどんページをめくる。
アルバムの中は笑顔が溢れてる。
そしておれはこの先この2人がどうなるのかを知っている。
この記録された写真の中は一瞬なのかもしれないけど思い出が保存されている。
まー妄想だけどね。
この写真を見て誰かと会話することもないし答えもない。
このまま誰の目に止まることもなく消えていく。
いや、別に見たくて見たわけじゃないよ。
ちょっと探し物をしててさ。
押入れの奥の方にある埃をかぶった場所を泥棒みたいに。
そしたらあってさ。
こーゆーの見ないんだけどたまたまね。
時間はいつも流れてる。
もちろん今も。
けど、確かにその瞬間を映した写真には時間と思い出がある。