大学在学当時、僕は映画研究部の知人（女性）がいました。

仮にＡさんとしましょう。

もともとは兄の高校時代の同級生だったそうで、「似ているからひょっとして…」と声をかけられ、何度か会ううちにちょっと「仲良し」になりましたが…
まあその話は別の機会に。

今回の話は、このＡさんから聞いた話です。


映画研究部（以下、映研）は、毎年大学祭で自主制作映画を上映していました。
この上映会のために映研が作った映画のフィルムは、けっこう保管されているものが多くあり、Ａさんはそのフィルムの整理をしようと思って作業をしていたそうです。

すると、保管庫の奥から古びたフィルムが出てきました。

映研の使っていたフィルムがどんなフィルムなのかよく知らないので（聞いたんですが、忘れた＾＾；）なんとも言えませんが、まあ、一本一本にラベリングがしてあり、いつ撮ったものかが分かるようにはしてあったそうですが。

その古びたフィルムには、何も書かれていない。

なんだろう、と思ってしげしげ眺めていると、そばにいた先輩のＢさんが、

「お！　禁断のフィルムだ！」

と言ったのだそうです。

「しかし、このフィルム、前に無くなったと思ったけどなあ、そんなとこに入ってたのか？」

Bさんはそう言って、首をかしげながらフィルムを手にとってながめました。

興味を引かれたＡさんは、禁断のフィルムとはなんのことか、Ｂさんに聞きました。

Bさんは勿体つけながら、そのフィルムについてのいわれを話してくれたそうです。


それによると…


もともとこのフィルムは、どこかの駅で撮影されたものだそうです。
松江駅ではなかったと思いますが、松江近辺のＪＲ（まだ国鉄の時代）、もしくは一畑電鉄の最寄駅でとったものとか。
くわしくはその先輩も知らなかったようですが。

ある年の大学祭で上映するため、鉄道マニアでもあったある映研部員が、その駅に行って、ホームにカメラを据えつけ、人が通る様子や列車が通過する様子をとにかく撮っただけのものだったようです。

完成したフィルムを、その部員はさっそく試写してみました。
人が通る駅のホーム、通り過ぎる列車。

そしてホームの端に、小学校低学年ぐらいの少年が写っていました。

「あれ、こんな子供いたかな？」

その部員は首をかしげました。
いくら考えても、撮影したときにはその少年はいなかったように思えたそうです。
少年は、最初から最後まで同じ位置にカメラに背を向けて立ち、微動だにしなかったそうです。

しかし、たたずむ少年が「いい味」を出していると感じた部員は、とくに気にせずそれを上映会で使うことにしたそうです。

ところが…試写や上映を重ねるたびに、部員は妙なことに気付きました。

少年の顔が、だんだんこちらを向いている…？


そうです。

はじめに見たときは間違いなくカメラに背の正面を向けて頭もまっすぐにしていたので、頭部は髪の毛と耳しか見えなかったのに、上映を重ねるたびにだんだんと頬が見えてきているのです。

気のせいかと思い、それでも上映を繰り返すうち、目や唇の端が写るようになりました。



まちがいない、振り返ってる！



完全に少年が振り返ったらどうなるのか？
興味はわきましたが怖くもなったその部員は、上映をやめ、フィルムをしまいこんだのです。


「これが、そのフィルム！」


Ａさんはフィルムをみせてくれました。
確かに見たのに、どんなものだったのか覚えていません。

そして、Ａさんはちょうど夏でもあるし、「肝試し」感覚でそのフィルムの上映会をするんだ、と言っていました。
僕も誘われましたが、そのときはちょうどバイトがあって断ったと思います。


そして上映会の日以降。

彼女との連絡は取れなくなりました。




…なんてことはないんですが(*´꒳`*)

Aさんいわく、機械のトラブルから、結局上映は中止になったそうで。


ただ、それからしばらくしてフィルムは行方不明になり、今ではみることは出来ないそうですが…

この話と似たような話を聞いたことがあるので、もしかするとAさんのホラ話かもしれませんし、映研に伝わる都市伝説的なものを面白おかしく話してくれただけかもしれません。


ただ、ホントだとしたら…

フィルムの少年が完全に振り返ったらどうなるのか、気になるところです。