昨日、齢26にして人生初めての体験をした

逆ナン―男性から声を掛ける通常の｢ﾅﾝﾊﾟ｣に比べれば非常にﾚｱなｹｰｽであるものの、男なら一度は脳内再生したことがある人は多いであろう

前日に友人たちと｢ﾅﾝﾊﾟ｣について語ってたこともあり、この日帰路に着く自分の中に｢もし女性から話し掛けられたらどうするべ｣という妄想があったのかも知れない

そして…

その光栄かつ貴重なｼｰﾝが俺に訪れたのだった

女性｢あのぉ…｣

ﾄﾞｷｯ。まっ、待てぃ(ｱﾝｼﾞｬｯｼｭ児島風Byｱﾒﾄｰｸ)。まだ心の準備が…。ここはｸｰﾙに決めるか、それとも自分史上最高のｽﾏｲﾙで対応するか…。そんな思慮を巡らせながら、間髪入れずに話し掛けてくる

女性｢すみません｣

異変に気付く。確かに女性の声であることには間違いない。ﾊﾞﾊﾞｧって感じでもない。が、やたらと声がかすれている。ﾀﾞﾐ声とでも言うべきか

恐る恐る振り返ってみる…

震えた。それは武者震いでもなければ、桜木花道がﾊﾙｺさんに一目惚れしたときの衝撃の類ではない。むしろ180度違う

顔はやさぐれた内館牧子似の30代くらい、そして最近洗濯した？と思わせる服装。頬は若干痩けていて、ひいき目に見ても瞬時に｢ない！｣と断言できる雰囲気だった

尋ねてきた内容にも問題があった

内館｢たばこ、ありますか？｣

俺｢なぜですか？｣

内館｢１本欲しいんです｣

無理な注文である。今や１本＝うまい棒２本の価値があるものを見ず知らずな人に譲る気はない。そもそもここは喫煙所ではなく、普通の一般道路

何がしたいんだろうか？単なるﾆｺﾁﾝ欠乏症なのか？それとも何か良からぬｺﾄを企てているのか…

たはこ１本ではあるが急に怖くなった。｢持ってません。ｽﾐﾏｾﾝ｣と冷たくあしらい、逃げるようにその場を去ったのだった――

終わってみれば逆ﾅﾝでも何でもなかったが、前日のこともあり胸を弾ませていた淡い期待は脆くも崩れ去った

このおぞましい体験を上書きするべく、帰宅と同時にｱﾀﾞﾙﾄ動画の｢逆ﾅﾝ｣ｼﾘｰｽﾞを物色した。画面の向こうには内館牧子もﾀﾞﾐ声女もおらず、俺はﾎｯと胸を撫で下ろした