僕の夏【跳べないバッタ】と暮らした3カ月。
蟋蟀、漢字だとこう書くらしいですね。
誰か読めました?読めないでしょうね。
もちろん僕も読めませんでした。
正解はキリギリスです。
7月初めのある日、僕は去年の卵から孵化させ、
3ヶ月かけて、25ミリ程に育てた80匹ほどのキリギリスを、生息地に放しに行きました。
これは、今年で三年目を迎える僕の夏定番の行事なのです。
その場所は荒川の支流の一つ、都幾川の河川敷。
今年は、6月と合わせて130匹をこの地に放しました。
ここは、埼玉県比企郡ときがわ町。
首都圏でありながら、この町には都会らしいものは何一つありません。
銀行がありません。
ファミレスもコインパークさえもありません。
電車の駅は、八高線の無人駅が一つあるだけ。
そんな自然豊かな近郊の山里に惹かれて、僕は年に30日ほどここを訪れているのです。
僕の家から高速を1時間飛ばして着くこの町は、
準絶滅危惧種に指定されるほど数を減らしてしまった、ヒガシキリギリスの一大生息地でもあるのです。
僕が川原に並べた三つのケースの中には、
成虫の半分ほどの大きさに育ったキリギリスの子供達が80匹。
動きも機敏になり、天敵から身を守る術も十分に身に付けた彼らは、
ケースを解放すると、一目散にカヤの草原の中に散って行きました。
「しっかり大きくなれよ。時々会いに来るからな!」
ふっと一息ついて、辺りを見回すと、一足先に大人になったキリギリス達が、あちこちで鳴いています。
でも、敏捷な彼らを捕まえるのは並大抵ではありません。
そんな時、僕の数メートル先のカヤ林の中から、ひときわ高く響く声で鳴く♂がいます。
僕は息を殺して、その美声の主をようやく見つけました。
細竹の先に刺した玉ねぎで釣るのですが、なかなか上手く行きません。
ようやく釣れた♂を見て、僕は愕然としました。
長肢が二本共無いのです。
キリギリスは、長肢で体長の50倍もの距離を跳躍し、
着地先で深い草原に潜り込むので、容易には捕まりません。
でも、長肢を二本共失い、這うことしかできないこの♂は、
なぜ敵に食われずに生き延びたのだろう。
僕は辺りの草を掻き分けてその謎を探りました。
おそらく、囮になった別の個体…多分♀が近くにいるはずだ。
慎重に探索すると、連れ添っていただろう♀が見つかりました。
その♀の長肢も一本欠けています。
多分、♂が外敵に襲われ、囮になって逃げた時、
自分も長肢の一本を失ったのでしょう。
このペアは大変な思いで、この過酷な自然界を生き抜いていたのです。
でも、共に障害を負ったペアが生き延びられるほど自然は甘くはありません。
僕は子供達を放したあとのケースに、この二匹を入れて持ち帰りました。
★☆★
この二人。昨日あい次いで、寄り添うように息を引き取りました。
長肢がない♂は、小松菜の葉や幹の間を這うようにしか動けませんでした。
でも、食欲は旺盛でパンをもりもり食べ、美声で彼女を魅了し、
8月中頃には、不自由な体で見事に♀と交尾を果たしました。
白い野イチゴの様な精胞を♀のお尻に押し付けているんです。
♀も必死に体を合わせ、それを受け取っています。
なんかね、それ見ててね泣けてきたんですよ。
昆虫って、とてもシンプルで一途な生き方を貫きます。
自分達の命って、次の世代への橋渡しに過ぎないんです。
たった半年足らずの儚い命。
その過程で致命的な障害を負ってしまった二人。
でも二人は、目一杯生きて自分達が生きる意味を成し遂げたのですから。
来年、この二人の赤ちゃんが20~30匹くらい
このケースの中で産まれるでしょう。
よし、僕に任せておけ!
お前達が繋いだ次の命は、僕がしっかり育てて、あの懐かしい故郷に帰しに行くからね。
お疲れさま。さ、土に帰ってゆっくりお休み(涙)
★☆★
「虫を見ている時の由宇って近寄れない。
あんな優しい目で私を見てくれたことなんて、一度だってないわ!」
なーんて、心無い女達に良く言われたような…
ま、分かれって言うのは無理でしょうね(笑)
そんな時は、ごめんなさい!
ニヤニヤしながらやり過ごすしかない僕です。
夏…
そんな僕の慌ただしい夏が、
今年もかけ足で去って行きます。
コメント
2017/09/06 20:26
26. こんばんは☆ミ
先日都幾川行きましたよ。
キリギリス、探してみればよかったー。
返コメ
2017/09/06 17:49
25. >>23 海斗さん
キリギリスは最後に近づくと赤茶色になりますね。
でも、そんな緑が多く自然豊かな環境に憧れています。
返コメ
2017/09/06 17:41
24. >>22 花男さん
食欲、性欲が不自由なら寝てるっきゃねえ…ってそれ…
人間、ずっと元気じゃいられねーから、ほんと考えなきゃな。
キリギリスは日本全体じゃ減っているよ。
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2017/09/06 17:07
23.
家の庭辺りには、自然にキリギリスはいます。
今朝も茶黒ぽくなった死骸がありました。短い生命だったのですね!
まだ活き活きとしたのは、スイカの蔓の辺りにも元気にいました。
関東では準絶滅指定なのですか?
つぶさんは、虫学者と呼ぼう(笑)
返コメ
2017/09/06 15:11
22. >>21 蟋蟀(不審ネコ)
さん
3大欲求の
2つを失ってるんですけど(´Д`)
キリギリスたちは、
増えてるような雰囲気はあるんですか?
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2017/09/06 13:27
21. >>19 花男さん
やあ、こんにちは。
なんか、断食とか酷い目に合ってるね。
痛々しくてコメもできなかったよ。
交尾もいいけどさ、まずメシを食わなきゃ、飛ぶものも飛ばねーよな(笑)
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2017/09/06 13:23
20. >>18 ヤックルさん
こんにちは。ハンネは一時的です。
ちょっと気まぐれで変えてみました。
虫達は人と違って感情は希薄です。その分だけ本能が強烈なんですね。
そんなキリギリスに、人の感情を注入して書いてみました。
返コメ
2017/09/06 13:15
19. キ、キリギリスですら(´ω`)交尾を
返コメ
2017/09/06 13:01
18. こんにちは(*^_^*)
ハンネが変わってましたね(^^;)
いつから変わってたんだろぉ~^_^;
この日記、読んでで切ないですね……
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2017/09/06 11:14
17. >>16 唯我独遊(アイリ)さん
飛蝗(ばった)ですね。
確かに芸は身を助けるって言いますからね。
さらにこの蟋蟀は、珍しい真緑色の個体だったんです(1/30くらい)
どんな子が産まれるか、来年春が楽しみです。
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