初めての情事の後…紅い蛍⑧
哈爾浜(ハルピン)の朝は早い。日の出を待ちきれないように人々が動き始める。
まだ薄暗い朝五時半だと言うのに、大八車やロバ引き車が、轍の音も猛々しく街路を走り回るので、僕は目が覚めてしまった。
よほど疲れていたのだろう。栄欄は僕の手を握ったまま、すーすーと寝息を立てていた。
その手をそっと解き、足元に乱れた毛布を掛け直そうと持ち上げると、
栄欄のバスローブの腰回りには、深紅の血の花が点々と散らばっていた。
僕は思わず息を呑んで、毛布でそれを隠した。
「何時なの?」
栄欄はそんな僕の気配に気づいたのか、虚ろに目を開け、肩肘をついて起き上がろうとしたが、
大きく開いた胸元を慌てて押さえながら、またベッドに崩れ落ちてしまった。
「まだ五時半だよ。九時に起こすから、それまでもう少しお休み」
肩口にキスをすると、栄欄はこくりと頷き、
焦点の定まらない視線を泳がせると、そのまま眠りに落ちてしまった。
初めての交わり。男の僕には計り知れない色々な思いや変化もあったのだろう。
襟元まで毛布を掛けてやりながら、僕は栄欄の寝顔を見つめた。
それは、利発で機敏な昼間の栄欄とはまるで違って、穏やかな幼女のような寝顔だった。
眉は薄く整えられていて、鼻筋は通り上唇は小さく湾曲し、下唇はそれほど厚くない。
顎から耳元へのカーブは穏やかな弓なりの曲線を描いている。
幼女のように見えたのは、色の白さと額の産毛のせいかも知れない。
誰かに似ているなと思ったが思いつかなかった。
近くて遠い…いや遠くて近い誰かに。
「ЙЩ∂〒θЙ…」
栄欄が突然寝言をつぶやいて、肩を毛布の外に出した。
更に、ひと言ふた言。
中国語なので、意味はわからない。肩をポンポンと叩いてやると寝言は収まった。
少し寝かせ、遅い朝食をとった後に、約束通り中央大街に指輪を買いに連れて行こう。
そうして、二人の気持ちに証を立てた後、
僕は彼女や彼女の身内、更に自分の両親や姉をも巻き込んだ、
日中の過去に真摯に向き合おうと思った。
気がつけば、東の空が赤く染まり朝日が昇り始めていた。
僕はベッドを離れ、早朝の街を見下ろした。
街の喧騒の彼方に、朝霧に霞んだ松花江(ソンフォアジャン)が見えた。
北朝鮮と国境を成す長白山系を水源に、東北大平原を潤しながら北に流れる大河は、
ここハルピンまで流れつくと、河と言うよりも湖に近くなる。
カヨコの舟は、この大河のどこかを寂しく漂っているはずだ。
★☆★
カヨコの舟…
この話の中に何度か出てくる「カヨコの舟」
その説明を放置しては、話の筋が成り立たないので、
ここで、一度話を僕が栄欄と初めて会った四日前の吉林に戻します。
八月一四日の午後四時、
吉林市で宿泊先のホテルの支配人の娘から通訳の栄欄を紹介された僕は、
二週間の通訳契約後、栄欄に誘われ、吉林市内の観光に出掛けた。
支配人の娘「令姐」は、栄欄の従姉妹だと紹介されたが、
二人は双子の姉妹のように、姿形は瓜二つだった。
上海、北京とつまらない旅に萎えていた僕は、
この二人の美人に遭遇して、少し浮き足立っていたのかも知れない。
夕刻になると、吉林市内には夥しい数の露店が出る。
そんな露店を冷やかしながら、
僕は栄欄に連れられて、松花江に掛かる吉林大橋に差し掛かった。
その時の僕は、
五五年前、この辺りで幼い命を散らした姉、カヨコのことをすっかり忘れていた。
そんな僕の前に、
姉カヨコは突然現れた。
-続-
コピペ疑惑騒動で、ちょっと間があいてしまいました。
憶測で色々言われたので、この話、全体公開やめようかと悩みましたが、
とりあえずは、今のまま続行します。
元のストーリーでは、この後堅い話が続き、
瓜二つの従姉妹、栄欄と令姐の謎も絡んで、
僕と栄欄のHシーンはカットされていますが、
男と女…しない訳はありません(笑)
カットしないで、ありのまま「挿入」して行きたいと思います。
コメント
2018/01/16 9:07
10. >>6 かよさん
![[晴れ]](https://img.550909.com/emoji/ic_sun.gif)
おはようございます
僕はお人好しだから、自分が気持ちを入れて描いてきたヒロインを、
悲劇的な結末には追い込めないんです。だから今まで悲劇は一編もありません。
ドンチャン騒ぎの大団円もないけれど、
悲劇に見えても、大きな希望や救いは残してきました。
ま、ご期待下さい(笑)
返コメ
2018/01/16 8:55
9. >>5 ( 'ω'o[ こころ ]o 癒えない心wさん
まぐろさんの文章ねえ…
最後の、どぴゅっ!がなければ大変なもんだと思うよ(笑)←いやマジに。
なに、あそこの白髪?
こんど、染めてやるからキャーキャー騒ぐなよ(笑)
返コメ
2018/01/16 8:48
8. >>4 クロコダイル・ダンディ・ケンジさん
いやいや、あのね…
分かりにくいこの話を、読みやすく読み進めて貰いたいから、
時々、本文にはないヒントを入れてるんです。
だから。あまり先読みしないで下さいね(笑)
返コメ
2018/01/16 8:44
7. >>3 海斗さん
初めて…って、余程の事がなきゃなかなか遭遇しないからね。
大変だけれど、気合いの入れ方も違ってきます。
赤飯の代わりに中華おこわ食べて、お祝いしました(笑)
返コメ
2018/01/16 8:38
6. おはようございます。
栄欄とツブ猫さんのこれから
に、どんな驚きの展開が
待ち受けているのでしょうか?
ハッピーな結末にはならず
悲恋の予感に、いささか寂しさが漂いますね。
返コメ
2018/01/16 7:46
5.
まぐろさんとパパ様の文を読んでると
いつも自分の学の無さに恥ずかしく
なるわ…(´×ω×`)
【布団】っω-)おはよう・・
若いっていいねぇ~
下の毛の白髪の処理しなくちゃだわ…(笑)
返コメ
2018/01/16 7:25
4.
文末の突如現れた姉カヨコがやはりキーワードですね(((^^;)
自分の推測してた実はカヨコは生きてたって事!Σ( ̄□ ̄;)
しかも、栄欄の母親!?
って安易な推測を覆す展開に期待してます(((^^;)
返コメ
2018/01/16 6:28
3.
初めて体を委ねてくれる女性は、かわいいです。
この先の謎が楽しみです。
返コメ
2018/01/16 6:14
2. >>1 ま~~~っさん
まぐろさんの1コメ?
なんか今日はエロい女に 出会えそうな気がする!
なわけねーか(笑)
返コメ
2018/01/16 6:08
1. おはようございますw
今日も冷えますな。
本番・・・じゃなくて本編はカットせずに無修正でおねがいしますwww
返コメ