【性欲と理性】の狭間で…紅い蛍No.21
ふと目が覚めると、十八も歳の離れた小娘が僕の左腕に額を預けたまま、すやすやと寝息を立てている。
鼻から吐く息は規則正しいリズムを刻んでいるので、どうやら本気で眠りに落ちたのだろう。
どちらが蹴飛ばしたのか、掛け布団はよれて二人の腰の辺りで丸まっているのに、
見回すと、僕が脱ぎ散らかしたズボンや上着はきちんと部屋の隅のハンガーに掛けられていた。
「栄蘭…」
小声で呼びかけて見たけれど、反応はなかった。
黒髪からは微かにシャンプーの香りがした。
おそらく栄蘭は、僕が寝落ちした後、風呂に入り
部屋を小綺麗に片付けてから、僕の隣へ潜り込んだのだろう。
布団を肩口まで引き上げてやると、栄蘭はふわっと薄目をあけて僕を見た。
「寒くないか?」
「あっ、大丈夫です」
短くそう答えると、栄蘭は慌てて少し開いたバスローブの胸元を直し、
また僕の腕を抱えて、眠りに落ちていった。
夜も十時を過ぎると商店はシャッターを閉め、露店も屋台を畳んで街はまるで時間が止まったように静まり返る。
フットライトの薄明かりの中で、聞こえるのは再びリズムを刻みだした栄蘭の吐息だけだ。
どんよりとした眠気の中で、この娘を愛しいと思い、また抱きたいとも思う。
その現れに、明け方でもないのに僕の体の一部だけは勢い付き、激しく張り詰めていた。
僕は、そんな自分にいたたまれない不安と嫌悪を感じた。
昨日の夕方から三十時間、昼夜なく何度も栄蘭を抱き続けている。
今からだって、寝ている栄蘭の膝を開き当てがえば、彼女は拒まずに応えてくれるだろう。
でも、それでいいはずもない。
栄蘭はただの行きずりの女ではない。
その証に、僕の脇腹に寄り添う栄蘭の左手薬指には、買ってやったばかりのプラチナリングが光っている。
「オレは盛った猿かよ?」
僕は自嘲を込めてクッと笑い、栄蘭を起こさないように離れて窓際に立った。
★☆★
ひと月の中国放浪の末に出会った賢く美しい通訳は、日本人残留孤児二世の大学院生だった。
彼女は、生まれて初めて僕と言う男の体を受け入れ、
たった一日で女として開眼したのだろうか?
そんなはずはない。
ただ無我夢中で僕になされるがまま、しがみついていただけなのだろう。
日付が変わった。
窓を開けると、遠くに松花江大橋の灯りが見えた。
今から五十数年前、吉林で姉カヨコの小さな遺体を焼いた灰は野山を漂い、
やがてこの大河に含まれ北上し、この辺りを流れ去ったのだろう。
でも、僕にはそんな遠い過去のことより、
今、ここに栄蘭と言う将来を誓い合った女がいると言うことの方が、はるかに重要な問題だった。
明日、二人は哈爾浜を発ち吉林に向かう。
凪いでいた川風が突然動き出し、僕の前髪をふわりと逆立てた。
何かが起こりそうな予感がした。
寝返りを打った栄蘭が、左脚を布団の外に投げ出して何かつぶやいた。
短く、中国語なので意味は分からない。
布団をかけ直してやりながら、穏やかな栄蘭の寝顔を見つめた。
二人だけで過ごせる哈爾浜の時間は、あと半日しかない。
目を覚ましたら、もう一度だけ、もう一度だけ栄蘭を抱こう。
吉林では、何が僕と栄蘭を待ち受けているのだろうか。
-続-
ごめんなさい。
多忙と体調不良で、ちょっとupが遅れました。
久しぶりに、全体公開にしてみますね。
コメント
2018/03/13 8:19
4. 優しいオジサマが、紳士見えて、いい感じに思える時期って~あるんだよね~(笑)
( *´艸`)クスクス
返コメ
2018/03/13 6:35
3. ツブさんおはようございます(^^)ハハハ中々やりますね~(*^^*)
返コメ
2018/03/13 6:16
2. >>1 Kou+さん
お久しぶりです。
何かね。拍ランで日記書く気力がなくなったよ。
虚しいと言うか、居場所じゃないか?とか、他へ行くかとかね。
多分、すぐにどうこうとは思わないけど…
コメントありがとう!
返コメ
2018/03/13 6:06
1. お久しぶりです。
どうしたのかな〓
と思ってました。
♪(´ε` )
返コメ