★松花江の夕陽★紅い蛍…No.25
「あなたは誰?いったい誰なの?」
まるで恐ろしいものでも見るように怯え、栄蘭は振り返りもせずに僕から去って行った。
誰って?僕は僕でそれ以上でも以下でもない。
昨日のこの時間、ハルピンで僕に抱きついていたのは誰?
あの二人の蜜月って何だったんだ?
この人形が一体どうしたと言うんだ?
僕はソファーに投げ出された舞妓人形を拾い上げ握りしめた。
一瞬、ダストシュートに投げ入れようかと思ったが思いとどまった。
この人形は、カヨコ姉さんの形見のようなもの?
いや、僕の中ではただ一つの形見そのものなのだ。
対岸の夕日が川面を朱色に染めながら、ゆっくりと落ちて行く。
無数のさざ波達が、きらめきながら列をなし、小魚のように跳ねている。
それは、あの河灯の夜の灯籠の群れに良く似ていた。
ここで亡くなった姉カヨコは、最期にどんな風景を見たのだろう?
僕は気を取り直して、絵の具を引き寄せ、絵筆を手に取った。
絵の具を絞り三色を混ぜ合わせると、だいだい色の着物の色に近くなった。
水色の襦袢、帯の黒と、僕はパレットにそれぞれの色を作った。
集中して塗り始めると、 この二週間ほとの出来事や、栄蘭との会話が鮮明に思い出された。
謎を解くには、幾つかの仮説を立ててみるのが常道だ。
栄蘭と令姐が双子だとしたら、令姐の母も日本人だと言うことだ。
令姐の霊感は、おそらく二人別々に育った過程で研ぎ澄まされたのだろう。
良く双子の間ではテレパシーが働くって言うけれど本当なんだろうか?
とにかく、二人が双子であることを隠すのは、彼女達の出生時にそうしなければならない訳があったのだろう。
彼女達が生まれた年は、文化大革命(文革)が佳境に入っていた頃だ。
時代が問題なのか?
分からない。
そんなことよりも、もっともっと根元に大きな何かが隠れていそうな気がした。
栄欄は、この人形をどこで見たのだろう?
まさか!
僕はふと思いついたことを慌てて否定した。
そんな事があるはずもない。
僕も栄欄も、もっともっと冷静にならなければならない。
-続-
コメント
2018/03/25 11:44
2. 今後の展開を予想すると楽しみです。頑張って下さい。
返コメ
2018/03/25 11:41
1. こんにちわ。
桜咲く春は暖かそうだけど、実は
寒い!
核心に近い気配すれど、またまた
の続! 続きは出来てるのでしょ
う!? 待ってます。
返コメ