【双子のベビーカー】⑥ファザコン風嬢の涙
「えっ、風俗?派遣でアパレルやってるんじゃなかったのか?」
「やってるよ。でも昼職だけじゃ無理なんだ。何の特技も資格もない私なんて…」
美奈はうなだれて、そっぽを向いてしまった。
「やっぱり言わない方が良かった。前彼もその一言で消えちゃったんだ」
背を向けてしまった美奈の肩を見つめると、小さく震えている。
「美奈ね、嘘つくのはいけないことだけど…でも、何でもかんでも告白すればいいってもんでもないよ」
僕は赤ん坊をあやすように美奈の肩口を撫でた。
「でも私、後でバレるなら先に本当のことを言った方がいい。彼にだってパパにだって同じだよ」
僕は考え込んでしまった。
確かに、親と縁を切って体一つで上京してきた娘が東京で部屋を借り、生活を維持するのは並大抵ではないだろう。
その他にも、年頃の娘は
服や化粧にだって金がかかる。
「でもね美奈…その仕事に向いてる?苦にならないか?」
「向いてるわけないよ!やでやでしょうがない」
「だったら、そんな風俗の真似事なんか辞めちまえ。他の仕事を探そう」
「真似事じゃないよ。半年続けたら業界じゃ中堅だよ」
美奈は自虐的に笑った。
でも僕には美奈が風俗嬢にはとても見えなかった。
ルージュも引かず、化粧も微かに目元だけ。
いま終わったばかりの初めての絡みだって、彼女の反応は、どう見てもプロの女性のものとは思えなかった。
「パパ、もう帰ろ。やる気なくなっちゃったでしょ?」
美奈は起き上がり、ベッドコンソールの上に僕が畳んだブラに手を伸ばした。
「まあ、ちょっと待て」
僕は美奈の手からそれを奪って元の場所に戻した。
「ちょっと驚いた。でも、このまま美奈と疎遠にはなりたくないな」
「私だってそうだよ!」
「いいから、こっちに来い」
長枕を指さすと、美奈は少し躊躇いながら。僕の隣に身を寄せてきた。
★☆★
たった一つのことで人を全否定できるほと、僕はましな人間ではない。
ましてこの娘は、この娘なりに大変な事情を抱えて生き抜いている。
ほとんどの人間の中には、善人と悪人が同居している。
何が良くて何が悪いとか、人を計る定規なんか誰も持っていないのだ。
「私ね、実の父親を留置場にぶち込むほどのロクでもない娘でしょ?」
うつ伏せて立て肘に顎を乗せ、美奈は遠くを見るような目で話し始めた。
「父親世代の男って怖いんだ。本心なんか絶対話さない。本当にパパが初めてなんだよ」
「悪かったな、ただのスケベ親父で」
「それはいいんだよ。男と女なんて…無駄な距離取ってられるほど人生長くないんだからさ」
「ありがとう。オレをなぐさめてくれて(笑)」
「別になぐさめてなんかないよ」
美奈はボソッとつぶやいた後、小さく笑って僕と目を合わせた。
「動物って凄いよね。一瞬で人を見抜くんだよ。リンがどんどんパパに慣れて甘えてるの見て、ちょっと私、嫉妬したよ」
「美奈…お前さ、やっぱり風俗はやめな」
「うーん、やっぱりヤなんだよね。娘が風嬢とか…」
「それだけじゃない。
いいとか悪いとかじゃなくて、お前には向いてない!」
「パパ…」
「なんだ?」
「もう一度、私を抱ける?」
振り向くと、射抜くように鋭い目線で美奈は僕を見据えていた。
その時の美奈…
都会の暗闇に呑み込まれそうになりながらも、
自らの退路を絶って、瀬戸際で生きていた女。
それでいて、何かに強烈に飢えていた。
-続-
コメント
2018/07/02 14:11
10. >>9 ×イチさん
![[バッド(下向き矢印)]](https://img.550909.com/emoji/ic_bad.gif)
黒歴史?
なにを今更、お互い真っ黒やんけ(笑)
さすが8年も日記やっとると、ネタの引き出しがマジヤバいっす
返コメ
2018/07/02 13:10
9. >>8 ツブ猫
さん
はは…(-_-;)
ワタスの黒歴史を…
まぁお互い生存確認出来て良かったっす!
また絡みましょう!←身体じゃなく日記ねw
返コメ
2018/07/02 12:51
8. >>7 ×イチさん
誰かと思ったらイチさんでねーの!
生きてた?(笑)オレも細々と生きてます。
何言ってんの?
またフィリピーナにかもられたネタとか…笑わせて下さいよ!
返コメ
2018/07/02 12:41
7. 続きを…
プリーズ!
ワタスも貴方ぐらいの文才あれば官能小説書けたのにー
↑
ジェラシー\(^-^)/
返コメ
2018/07/02 12:20
6. >>3 ミキさん
ミキさん、コメありがとう。
男と女…一筋縄では表現できません。
色々なケースで色々な思惑が絡み合い、他にはないただ一つの形になって行きます。
ミキさんのラブストーリーも、キラキラの女性目線で書かれていてとても素敵ですよ。
こちらこそ、是非仲良くして下さい。また日記にお邪魔しますね。
返コメ
2018/07/02 12:09
5. >>2 銀毛狐 …霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖かも…さん
さすが狐さん、顔がお広いですね。
そう、一昔前のように濡れ手に粟なんて世界ではないみたいですね。
返コメ
2018/07/02 12:05
4. >>1 コテツさん
こんにちは
確かに、ちょっと重い展開ですね。
告白する女、それをなんとか理解しようとする男…
続きは2~3日後にアップしますね。
返コメ
2018/07/02 11:05
3. 発コメ失礼します♪
素晴らしい文章力ですね!!
そして細かな描写に、目の前で二人のやり取りが展開されてる様な錯覚まで起こします!
久々に素敵な文章に出会えて嬉しいです♪
是非仲良くして下さい(*'▽'*)
返コメ
2018/07/02 11:03
2. お疲れさまだす<(_ _)>
そいえば風嬢やっとる友達も居てまつがなかなかたいへんな世界みたいだすなあ(ΦωΦ;)
返コメ
2018/07/02 10:20
1. おはようです(^-^)/
この展開でやりとりの重さ(^_^;)
続きが早く読みたい!!
返コメ