【双子のベビーカー】セフレからのお別れメール(完結版)
60代前半  東京都
2018/08/27 7:19
【双子のベビーカー】セフレからのお別れメール(完結版)
「最後もゴムって…なんか悲しい」


終わった後のゴムを、ベッドサイドの薄明かりにかざしながら美奈がつぶやいた。


「パパ…やっと私から手が離れる!ってせいせいしてるよね?」


僕はフッと笑い、否定も肯定もせずに話しを横に振った。


「お前のことだから、オレとホテルに入ったこと浩史に報告するんだろ?」

「うん、もうline入れたよ」


「彼、なんて言ってた?」


「避妊しろって。後は気が済むまでヤって、パパのことはきれいさっぱり忘れろって」


浩史…会ったこともないまだ26の若僧だけれど、こいつならこの暴れ馬の手綱を引けるかな…

その時、ふとそう思った。


「パパのことね、みんな浩史に話してるんだよ。彼ね、本気でパパに会いたいって言ってる」


「いや、それはやめとこう。いい奴だと思うよ。でもね、わざわざ会うことはない。
目の当たりに相手を見ると、お互い無駄に動揺するもんだよ」


「パパって大人だよね。私ガキんちょだし、ほんとに彼とやっていけるかな?」


「大丈夫だよ。浩史は若いけどお前よりずっと大人だ。美奈のことも良く分かっている」


鼻をグスグス鳴らしていた美奈が、突然しゃくり上げて泣き出した。


「パパと、もうほんとにお別れなんだね」


「裸の付き合いはね。寂しいけど美奈の将来のためだよ」


「大人、大人って、大人がどんだけ立派なの?
パパと私を引き離すヤツはみんな大嫌いだ!浩史も、このゴムも!」


いきなり僕の腕から抜け出した美奈は、替えのゴムが入った小箱を掴むと冷蔵庫へ向かって投げつけた。


「こら、暴れるな。ゴムはともかく、浩史をそんな風に言うんじゃない!好きだから一緒になるんだろ?」


泣きじゃくる美奈を組み伏せ抱きしめると、微かな胸の膨らみを突き抜けて、
美奈の激しいしゃっくりと速い鼓動が直に僕の胸板に響いた。


「パパ…」

「何だ?」


「私ね、一度も呑んだことないんだ…精子。パパの味って覚えておきたい」


「また、そんなこと(笑)
前に一度だけ誤爆したよな。えらく怒って吐き出したじゃないか!」


「うん、だからね…あの後ひどく後悔したんだ」


美奈は腕枕からすり抜けると、僕に覆い被さりながら唇を合わせてきた。

そのまま、半勃ちの僕を根元から締め付けるように握りしめる。


「最後がゴムって悲し過ぎる。だからここにちょうだい」


美奈は長い舌を出して、その真ん中を指差した。



「口に?無理無理、気が引けて射てないよ」


「だめっ、絶対イくまでしゃぶり続けるからね!」


美奈は、途中で何度も髪を掻き上げ、意地になって僕を吸い取ろうとしている。


その姿はあまりに健気で、僕を激しく責め立てた。
八年もの間、もっと優しく接してやれなかったのか…


     ★☆★


小学生の多感な時期に、大切に育てていた子ウサギや子猫を山に捨てられ、

母親には日常的に暴力を振るった美奈の父親。



そんな父親を警察に通報し留置場にぶち込み、実家を捨て一人上京した美奈。


抱いてみて分かったのだが、そんな美奈の性癖は決してドSではなかった。


彼女が五反田で振るっていたムチは、父親に見立てた同世代の男達への復讐だったのだろうか。




その瞬間、美奈は目を丸くして思わず口を開けたが、

気を取り直したように再び僕に吸い付くと、間を空けずに飲み干した。


「なんかあんまり美味しくないね」


顔をしかめ、口をパクパクさせながら美奈がつぶやいた。


「ごめん…」


慌ててティッシュを差し出すと、美奈はそれを握りつぶして微笑んで見せた。


そればかりか、飛び散った雫まですくい取り、その人差し指を舐めて見せた。


「ちょっと苦くてしょっぱくて、意地悪なパパの味がした」


僕は大きなため息を吐いた。


「パパ…今の幸せって捨ててしまわなくちゃ、次の幸せって来ないの?
やだよ。怖いよ。そんなの信じないよ!」


少し持て余し気味だった野生の女美奈を、その時手放すのがとても怖くなった。



     ★☆★



あれから、二度目の夏が過ぎた。


美奈からは、
「籍をいれました。パパ色々ありがとう」と最後のメールが届いたきり、一年近くが過ぎていた。


それは、富士山の初冠雪が告げられた初秋の頃だった。


仕事中の僕に一通のメールが届いた。美奈からだった。




【パパ…本当にご無沙汰しています。
私ね、信じてくれないかもだけど、パパと付き合っていた頃よりずっとずっと普通の女になりました。

浩史がね、とっても優しいんです。パパよりずっとね(笑)

本当はパパといっぱい話したいんだけど、さすがに浩史に気を使ってご無沙汰してました。
どう?私って普通の女でしょ?(笑)


あのね、ここからが本題なんです!びっくりしないで下さいね。子供が生まれるんです!

それがね、大変だよ!双子だって!双子の女の子だって。もう私、どうしたらいいの?

お母さんにだってなれるかどうかなのに、いきなり二人だよ。

でもね、怖いけど本当は
嬉しくてしょうがないんだ。早く産まれてきて欲しい。嬉し泣きしながら二人を抱きしめたいの。


それでね、パパに最後のおねだりをします。双子のベビーカーを買って下さい。

浩史にはごめんなさい。母方の叔父からのお祝いだって…最初で最後のウソをつきます。
だからお願い。美奈の最後のわがままです。

だって、だって…パパは私にとって、失ってしまった実家みたいな人なんですから…】






書きかけの書類が、テーブルからパラリと滑り落ちた。

「おめでとう」立ち上がって、そう言おうとしたのだけれど、喉が詰まって声にならなかった。


ベランダを開け、美奈達が住む東の空に目をやった。


「おめでとう」やっとの思いで声を出すと、


涙が止めどもなく溢れ出て、もう何も見えなくなった。




       -完-



やっと書き終わりました。

全15編。僕が書いた色んな女性の中でも、最も破天荒なキャラの持ち主「美奈」…

途中で様々なコメントを頂きましてありがとうございました。とても参考になりました。


ま、少し疲れたので、ちょっと充電して、また書き始めますね。







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コメント

70代以上  鹿児島県

2018/08/28 1:26

34. 「完」でしたか。とても綺麗に終わりましたね。
書きかけの書類が落ちてから、東の空を見上げて、おめでとうを言うまでのシーン、パパのこころを思うと、とても切なかったです。
美奈とパパ、それぞれの道の先に幸せがたくさん降り注ぎますように。

60代前半  鹿児島県

2018/08/28 0:45

33. 
交際相手の女性に彼氏ができて妊娠する。

長年のつき合いも仕方なくそこまでとなる。

まぁ、人生にたような話はあります。でも交際相手が出産してからは、一線を断つことが人生うまくいく。

似たような実話はあります。

60代前半  東京都

2018/08/28 0:33

32.  >>31 龍(ロン)さん

糞爺!て悪態つくくらいだから、か弱い女じゃなかとです。

でもあの糞根性があって 逆境を乗り越えられたんでしょうね。

ま、実話かどうかはスルーで(笑)

金子[退]
40代半ば  東京都

2018/08/27 23:24

31. ツブ猫さん(*^^*)

長編 小話 お疲れ様でした ヽ(*≧ω≦)ノ
話を作るのに必要な経験は
どこでつまれたのでしょう?

くそ爺言ってたか弱い女性が
親になるか…

そして。子を守る強い人に生まれ変わる
その人の一部でも 忘れられない一角の人になれるなら そんな出会いもしてみたいもんですね♪

いまだに 実話と思ってるオイラ (*゚∀゚)

60代前半  東京都

2018/08/27 22:01

30.  >>29 ヨシさん

こんばんは。コメントありがとうございます。

③位で終える予定がこんなに長くなってしまい、また途中、間が空いたりいつものことながらすみませんでした。

今回はかなりアクの強い女性を書いたので、女性読者さんには少し刺激が強かったみたいです[バッド(下向き矢印)]

また、書きますね。ありがとうございました。

60代前半  大阪府

2018/08/27 21:38

29. 長編お疲れ様でした。

最終話

なんだか とっても 良かったです。

彼女の直球

男の葛藤

印象的です。

しばし休まれて、また気持ちが乗ったら次回作品を[にこにこ]

60代前半  東京都

2018/08/27 20:44

28.  >>27 きらさん

こんばんは。世田谷豪雨で立ち往生中です。ズブ濡れです(笑)

いつもご愛読ありがとうございます。

次は、近いうちに構想練りますね。

60代前半  東京都

2018/08/27 19:52

27. 毎回待ち遠しく、楽しく読ませていただきました!
ありがとうございました。
次の物語はあるのでしょうか?

60代前半  東京都

2018/08/27 19:44

26.  >>23 ゲスいけど品行方正でチョロい普通のジュブジュブ山ジュンメンバーさん

あ、ZMGKの大先輩を差し置いて偉そうな日記書いちまいました(笑)

双子用ベビーカーはね、中古から高級品までかなり出回っていますよ。

お値段は秘密です(笑)

60代前半  東京都

2018/08/27 19:39

25.  >>22 ロックさん
ロックさんコメントありがとうございます。

はい、まさにオチです。体操競技では着地。物語の中で一番大切な部分ですね。

いつもご愛読ありがとうございます。

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