白いアシカ①【露天風呂で男湯に潜水侵入してきた亜衣(笑)】
60代前半  東京都
2018/09/24 5:32
白いアシカ①【露天風呂で男湯に潜水侵入してきた亜衣(笑)】
「ねえ、そっちって誰かいる?」

目を閉じてくつろいでいると、突然パシャパシャと言う水音と同時に女の小声がした。

僕はギョッとして辺りを見回したけれど、湯煙だけで人影はない。
しかも、その声は聞き慣れた澄んだ声だった。



ここは、丹沢山系の小さな温泉集落にあるひなびた小宿。
平日の午後だったので、飛び込みでも女将さんが快く泊めてくれたのだ。


「なんだ亜衣か?驚かすなよ」


「この露天風呂ね、脱衣場と通路は別だけど、お風呂は一つで目隠しで仕切ってあるだけみたい。
そっち、誰かいる?」


「誰もいないよ」

「こっちも私だけだよ。ほら…」


亜衣は笑いながら片脚を伸ばして男湯の方に入れてきた。


驚いたことに、仕切りの竹垣は湯面から上だけで下は素通しだったのだ。


亜衣の白く長いスネが乳白色の湯の中をゆらゆらと漂っていた。
その足首を捕まえて、グイと引っ張ると亜衣は悲鳴を上げた。


「ちょっと何すんの!」

「いいから、こっち来ちゃえよ」

「無理。潜んなきゃ行けないでしょ」

「どうせ、髪洗うんだろ?」

「…そうだけど…」


亜衣は、本当に誰もいない?
誰か来たら潜って帰ればいいんだよね。などと確かめながら、

「絶対やらしいことしないでよ!絶対だよ。約束だからね」

などと念を押して、まるで白いアシカのように体をくねらせ、ヌッと僕の目の前に現れた。




天頂は濃い青でも、筋雲は天高く山はもう秋の装いだった。

深紅のアキアカネが二羽、洗い場に溢れた湯を尾の先で掬い取って飲んでいる。

岩風呂は深い木々の旺盛な枝葉に覆われてはいたけれど、
その僅かな隙間から傾きかけた陽光が鋭く差し込んでいた。


「あの赤トンボ、恋人同士なのかな?」

「まだ付き合い始めたばかりだな。Hはまだみたいだ」

「なんでそんなこと分かるの?」

「トンボはね、Hの後は二人で飛ばない。メスは次の相手を探しに行くんだよ」

「ふーん、それじゃ人間とまるで逆じゃない」


「トンボのメスはね、生涯で普通4羽のオスとHするんだ。
ただし前カレより強くて優しくて運動能力のあるオスにしか体は許さないんだよ。
それで、体の中に貯めていた最後のカレと一つ前のカレの種で卵を産むんだよ」

「へえ、だんだんレベルアップさせるんだ。それなら少し納得(笑)」



亜衣と僕は、肩をくっつけ合ってはいるけれど、まるでファミレスでダベっているようで、それ以上は触れ合わない。

見慣れた亜衣の裸だけれど、今日はまるで別の生き物に見えて、僕は少し動揺していた。


亜衣の控え目な繁みが、湯の中をサワサワと泳いでいた。
それはまるで白い珊瑚礁に止まった幼いイソギンチャクの触手のようで、僕は思わず息を飲んだ。


欲情したのかしないのか、体の節々が無駄に強張るので、僕は亜衣を引き寄せると無難にそっと手を握った。


「今日の亜衣は、白いアシカに見えたよ」

「アシカって、黒いのしか知らない。白いのっていたっけ?」

「さあ、知らないな」

「勝手に変な生き物作らないでよね(笑)」


髪を絞り顔の雫を払い落としながら、亜衣はくすくす笑っている。


「でも、人魚じゃなくてアシカなのね?なんか微妙。まあ胸ペタンコだし、髪もショートにしちゃったから仕方ないか」

「そだな。人魚ってほど女っぽく豊満じゃないよな(笑)」

「でもね、私四年前に会った時から2キロ増えたんだよ」

「どこが?」

「残念、胸じゃなくって二の腕とかお尻みたい」



「亜衣…」

「なに?」

「キスしていいか?」

「ええっ、一回だけなら…」


その時だった。

男二人の話し声が露天風呂へ降りる階段から聞こえてきた。


「やばっ!キスはお預けね…」


亜衣はそう言うなり白いアシカに戻ると、音もなく湯の中に消えていった。




       -続-




毎年この季節…

僕は春先に孵化し、真夏に繁殖を終えたキリギリス達を、元の生息地に返しに行きます。


今年の秋も、脳内彼女の亜衣を連れ添っての、二人旅です(笑)


夜が更け、体の芯が火照ってくる頃、亜衣はおかしなことを口走ります。







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コメント

60代前半  東京都

2018/09/29 18:08

24.  >>23 てんこさん
こんばんは。多忙でログインできず、返コメ遅れてしまったよ。ごめん(汗)

彼岸過ぎたら雨ばかりだね。おまけにまた大型台風。上陸して縦断したら大変な被害だろうね。

みんな、備蓄は大丈夫かな?

50代前半  福島県

2018/09/27 0:29

23. おばんです。
今宵、秋の夜長に既読しました(^.^)
寒いので、
あったかくして寝ましょうか(๑╹ω╹๑ )いいね[指でOK]

60代前半  東京都

2018/09/24 21:27

22.  >>21 トキオさん

あれ、TOKIOさんこんばんは!

気まぐれで飛び込んだ宿で、高級旅館ではありえないハプニングを堪能しました。
くせになりそうです(笑)

60代半ば  東京都

2018/09/24 21:11

21. ドラマのワンシーンみたいですね(^_^)
混浴露天風呂や部屋のお風呂では味わえない楽しみですね

60代前半  東京都

2018/09/24 14:15

20.  >>19 フッキーさん

トンボのメスは凄いよ。 初めてとその次は練習みたいなもんだからね。

だけど、人間の♀はマネしちゃダメ。トンボは最後の相手の子から優先的に産むんだから。
まるで仕組みが違うんだよ。

40代半ば  宮崎県

2018/09/24 14:06

19. 稲刈り時期になると、トンボ、よく繋がって飛んでるの見かける(笑)

知らんかった~繁殖の仕組み…

トンボのメス、凄いね~( ̄∀ ̄)[たらーっ(汗)]

60代前半  東京都

2018/09/24 12:12

18.  >>17 YADA子さん

おはよ!じゃないか。もうお昼だね。

虫の話題に持ち込めれば実に饒舌になるけれどね、
リアル僕は結構シャイで無難なことしか言わないみたいだよ[バッド(下向き矢印)]

30代前半  東京都

2018/09/24 12:01

17. 
普通の会話(じゃないか?)がホントに素敵!
こんな男に出会ったらイケメンじゃなくてもお持ち帰りされてもいいw

60代前半  東京都

2018/09/24 10:45

16.  >>13 銀毛狐〓ホシの招待状(前編) 三面怪人ダダ921号←Btype〓さん

狐さん、おはよう!

夏が過ぎゆくこの時節、僕には寂しい季節です。 もう、来年の夏のことを思い浮かべていますから。
でも、今年のような激し過ぎる夏は困り者ですね。

60代前半  東京都

2018/09/24 10:38

15.  >>12 かよさん

おはよう!
脳内彼女はいいですね。 何をされても怒りません!と言いたいところですが…

僕の脳内彼女達は、結構暴れ馬だったりするんで、良く脳内大ケガとかしといます(笑)

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