白いアシカ【完】ここは天国?或いは?★新説…現代の浦島伝説★
60代前半  東京都
2018/11/06 0:42
白いアシカ【完】ここは天国?或いは?★新説…現代の浦島伝説★
可奈のリズミカルな寝息が、僕の裸の腕をしっとり湿らせている。

時々口をパクパクさせたり、額を僕の肩にこすりつけたり、その仕草はまるで幼子のようだ。


思い出せば、初めて可奈に会ったのはもう三年も前のこと。あれは確か川越のファミレスだった。


亜衣が「私の彼よ」と僕を紹介すると、可奈は唇をきっと結び、あからさまな敵意で僕を睨みつけた。


そんな可奈が、今は思いがけず僕の二人目の妻となり、丸裸のまま僕に寄り添いすやすやと寝息を立てている。

張り詰めていた緊張が解けて、気が抜けてしまったのだろう。

僕は、乱れた上掛けを首まで引き上げてやり、そっとベッドを立った。



亜衣が、きっと心配しているに違いない。

風呂場のラッチ窓を開けると、天頂の日が傾き始めていた。

すっかり冷めた湯舟に足を泳がせていると、
先週亜衣と交わした会話が甦ってきた。



「亜衣、いつこんな大それた家族計画を思いついたんだ?」

「赤とんぼよ。覚えてる?丹沢の露天風呂で会ったアキアカネのカップル」

「ああ…」

何となく思い出した僕は曖昧に相槌を打った。


「由宇が繁殖の仕組みを教えてくれたじゃない。あれって、私には目からウロコだったわ」


「そうか、あの話が…」
→(白いアシカ①)

僕は頷きながら、亜衣の突き出したお腹に手をやった。

「摩耶ちゃん、ほらパパが何かお話したいんだって」

手のひらをそっとお腹に当てると、摩耶のかかと蹴りが僕の手に炸裂した。

「怒ってるよ!」

「やあね、喜んでるのよ」

「樹里とは年子の姉妹か…きっと、仲良し姉妹になるだろうな」

「そうね。きっとご近所でも有名な美人姉妹になるわよ」

そこまでは、ごく普通の夫婦の会話だった。



だが、亜衣はひと呼吸おくと、僕を見据えてこう告げた。

「それより由宇…来週可奈ちゃんを抱いて上げて。彼女もう卒乳したし、体はもう大丈夫。とてもきれいよ。彼女もあなたを待ってるわ」


「いま、その話か?」

「私達家族には、とても大切なことなの。あなたにしか出来ないことなのよ」

「いいんだな?」

「じゃなくて、私がお願いしてるのよ!」



      ★☆★


むず痒い思いで駐車場に車を停めると、
樹里を抱っこした亜衣は、満面の笑みで可奈と僕を出迎えた。

ダイニングには、三膳の赤飯に紅白の割り箸までがすでにセットされていた。


「心配してたのよ。途中で電話って変でしょ?
で、由宇どうだった?」

小声で話しているつもりなのだろうが、亜衣の声はとても良く通る。

「由宇ね、いっぱい話してくれたし、ほんとにすごく優しかった」

「そうなの、良かったね!」


亜衣は腰を折って、可奈の髪をもみくちゃにしながら抱きしめている。


僕はそんな二人を遠目に、全力疾走ハイハイで駆け寄ってきた樹里を抱え上げた。

抱きしめると、少し前に吸い上げた可奈の乳の甘い香り鼻腔いっぱいに広がった。



「赤飯とか何の儀式だよ?まったくねぇ」

そっと樹里に語りかけると「パッパ、パァパ!」と目をキラキラ輝かせ、覚えたての言葉で僕に語りかけてくる。


「三人の女達、みんなそれぞれだけれど、お前が断トツ可愛いよ!」

樹里の耳元でそう囁くと、僕は庭に出て「高い高い」と天高く彼女を持ち上げた。


「樹里をあんまり興奮させないでね!さ、乾杯するんだからこっちへいらっしゃい」

亜衣の声が間近に聞こえた。




僕は、なぜだか急に涙が溢れてきて、慌てて亜衣の後ろ姿から目を逸らせた。


亜衣…お前、本当にこれで良かったのか?

お前がもし男だったら、
もし男だったら…

オレ達はきっと親友になっていただろうな。

お前がたまたま女だったばかりに、オレはお前を抱くことばかりに現を抜かしていた。

ダメな男だよ。オレは…

でも、お前の笑顔を見ていると、この家族もまんざらじゃない。

罪滅ぼしじゃないけれど、オレの余生は全部お前に捧げるよ。

使い物にならなくなったらいつでも切り捨ててくれ。






来月、こんな家族にもう一人の女が加わる。僕と亜衣の娘で樹里の妹「摩耶」だ。


暮れ始めた西の空から、オレンジ色のナツアカネが数羽飛んで来て、
ふわふわと舞いながら東の空に飛び去って行った。


僕は樹里を抱っこしたまま食卓に向かい、プレモルが泡立つグラスを高く掲げた。





亜衣の悪企み?

いや、赤とんぼが亜衣に教えた新しい家族の形は今、もう一つの実を結ぼうとしている。






それとも…

ここは、僕が傷ついた白いアシカの背に乗ってたどり着いた竜宮城?

だったら、きっとこの家のどこかには、玉手箱が隠されているはずだ。



でも僕は今、

それをあえて探しはしない。





       ―完―




一夫一婦制って、文化人が無理やり作り出した秩序ですよね。


世の中の仕組みって、全てそれを基本に定められています。


でも、そんな家族が不幸にも破綻したら…女性にかかる負担は計り知れません。

破綻はしなくても、子供を作る余裕のない夫婦は
世の中に溢れています。


その結果が少子化?
外国人移民の受け入れ?



亜衣の決断って、果たして荒唐無稽な暴挙なのでしょうか?


ま、これは、そんな疑問をテーマにして、だらだらと綴った、

浦島由宇太郎の【おとぎ話】でした(笑)








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コメント

60代前半  東京都

2018/11/06 8:33

8.  >>7 ゆーくんさん

おはよう。コメありがとう!
今までの亜衣のイメージをブチ壊した…なんて怒りのコメも頂きましたが[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
ご指摘通りのいい女ですよね。

20代後半  山梨県

2018/11/06 8:17

7. 
亜衣さん、魅力的な女性ですね。頭が良くて、謙虚で優しくて、それでいて実行力もある。

もし、こんな女性が目の前に現れたら、やるやらないじゃなく、俺はすべてをかけてプロポーズするだろな。

60代前半  東京都

2018/11/06 7:59

6.  >>5 風来坊さん

おはようございます。
今回も何とか着地(エンディング)が決まりました。
D難度くらいかな?
ウルトラE難度をいつか決めてみたいものです。

60代後半  鹿児島県

2018/11/06 7:30

5. 今回も面白かったです(^-^)/ 次回も楽しみに待ってます(^^)v

60代前半  東京都

2018/11/06 1:22

4.  >>3 かよさん
こんばんは。僕は脳天気な性格なんで、この話も結末など何も考えずに書き始めたんです。

連載はみんなそんな感じで、途中で結末を思いつくのです。

それがしっくりこないと 途中で連載中止も時々[バッド(下向き矢印)]
厳しい読者さんも多いので、気合いを入れ直してまた書きますね。

長い話を、いつもご愛読本当にありがとう。

50代半ば  大阪府

2018/11/06 1:10

3. こんばんは。
由宇が、浦島太郎で浦島太郎を竜宮城に連れて行ったのは、亀じゃなくて「白いアシカ」の亜衣・・・。由宇が竜宮城で出会った乙姫さまは、樹里と、これから生まれて来る摩耶ってことなんですよね?? こういう結末だったのか~。というのが、直後の感想です。
こんなお話、こんなエンディング、よく創作出来ましたね。単なるハッピーエンドでなく、その後を読者の想像力に委ねる感じが、憎いなぁ・・・。

60代前半  東京都

2018/11/06 1:09

2. 
お前がもし男だったら、
もし男だったら…
オレ達はきっと親友になっていただろうな。
お前がたまたま女だったばかりに、オレはお前を抱くことばかりに現を抜かしていた。

↑↑
これは、男が良く陥る後悔です。時の流れって思うより早いんです。

女は天女のように優しくて、鬼のように怖い…
そんな物語でした。

30代前半  埼玉県

2018/11/06 0:57

1. 
亜衣さん?愛さん?
ツブパパの日記に何度も 登場してるのに…キャラがメチャクチャ!(-"-;)
と、怒り心頭でしたが、さすが最後はきれいに纏めてくれてありがとう。
ほんと今回は、ハラハラドキドキものでした(笑)

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