【デヴィルと私とゴリマッチョ】完結編 もうっ!ゴリラのくせに三十女を何度泣かせたら気が済むの!
哲也の上腕二頭筋は、枕にするにはちょうど良い
硬さなんだけど、
密に生えた毛が耳をくすぐるので、私は何度も
太い腕に耳を擦りつけなくてはいられない。
「おい、何をゴソゴソ動いてるんだ?」
「だってぇ、哲也の腕の毛が耳にはいるんだもん」
課長でも哲也さんでもなく、哲也って初めて呼び捨て
にしてみた。
「わかったよ。今度会う時は剃ってくる」
「いいの、このままで。私が慣れればいいんだから」
哲也はふふっと笑って、私の左乳首をギュッと摘んだ。
「ちょっと、やめてよね」
「わかったぞ。こがスイッチだな」
「もうっ!」
肩を窄めた拍子に、哲也の忘れ形見が私の中から
溢れ出し、内股を濡らした。
私は、哲也に気付かれないように、その滴を指で中に
押し戻した。
拭き取らないのは、私の悪だくみ。
男なんて気まぐれ。哲也が私に冷めないうちに、
彼の子種を捕まえて根付かせて見せる。
最悪な出会いを打消すために、
私は人生最後の大博打に打って出たのだから。
そんな私を、意地悪そうにニヤニヤ見つめてる
奴がいた。
ZOZOで買った安物のショルダーバッグから、
顔だけ出している、黒ずくめのバイキンマンだ。
まばたきもせず、私と哲也の様子を覗き見している。
「やだ、あいつに見られてた!」
「なにっ」
一瞬、気色ばんだ哲也も、私が手を伸ばして掴んだ
バイキンマンの縫いぐるみを見て、怪訝な顔をした。
「何だこれ?あまり可愛くないな」
「だってデヴィルだもん」
「さっき、デヴィルが…とか口走ってたの、
こいつのこと?」
「そう、あんまり私を苛めるから、お仕置きしよう
と思って買ったの。セコハンショップでね」
哲也はバイキンマンを手に取り、クルクル回しながら
つぶやいた。
「可愛くないけど、ワルにも見えねーな。こいつ」
「でしょ?買った時は、殴ったり蹴ったり火炙りに
したり…とか思ったけどね。逆に仲良くなっちゃお
かな!て思って、持ち歩いてたの」
呆れ顔で私を見つめていた哲也は、いきなり大声で笑い出して、私を抱きしめた。
「お前ってヤツは…まったく」
哲也の胸毛に蒸せながら、一緒に笑い転げた私も、
気が抜けて逆にグスグス泣き出してしまった。
本当は…
華奢な私は、細身か細マッチョな男がタイプだった。
でも、元ラガーマンの哲也は胸毛ボウボウ、身長は
一八五のゴリマッチョで、正直言ってまるでタイプ
ではない。
いや正しく言うと今の今までタイプではなかった。
でも、今はそんなゴリラの体毛までが、愛しくて
愛しくてたまらない。
「由美、さっきお前…『だったら、あなたがずっと
買ってよ!』とか口走ってたな?」
「え、そんなこと言いました?忘れて下さい。
たかが、ビッチのたわ言ですから」
私は胸の上に乗った哲也の手を振り払って、わざと
彼に背を向けた。
「お前さ、確かご両親とも死別していたよな。たった
独りで良く頑張ったな。生きていればな、もうそれ
だけで充分だ。お前の無念は俺が晴らしてやる」
涙が止めどもなく流れた。
それを哲也に見られたくなくて、私は彼に背を向けた
まま、上掛けを深く被って嗚咽した。
そんな私に哲也はさらに追い打ちをかけた。
「お前さ、嫌じゃなかったらケリがつくまで俺のところへ来い。家賃だって浮くだろ?」
「ええっ、それって…本気で言ってます?」
私は上掛けを跳ね除け、哲也を睨みつけた。
そんな気丈な仕草を見せても、唇だけは隠しようも
なく、ブルブル震えて止まらない。
もうっ!ゴリラのくせに三十女を何度泣かせたら
気が済むの!
涙と鼻汁で、哲也の胸毛はベタベタになったけれど、
それでも私は泣きじゃくった。
男の胸で思いっきり泣ける幸せを噛み締めながら。
「でも…ケリがつくまでなのね?」
「ん?まあ、とりあえずな…」
涙声で哲也を問い詰めながら、私は自分の強欲と
狡猾さに呆れ果てた。
デヴィルさん、グッジョブ!
さっきは悪態ついてごめんなさい。
あとは私にまかせてね。
ここからが女の正念場!もう一息なの。毛ムク王子は
まだ鞍の上。やっと白馬の尻尾を掴んだわ。後は
振り落とされないように這い上がるだけ。
「いいわよ。女を…甘く見ないで!」
私は哲也の耳元で、口まねだけでささやいた。
「ん、今なんか言った?」
「え、なにも…」
「いや、絶対なんか言っただろ?」
「うん…ほんとはね…もう一回だけ哲也が欲しいの。
だめ?」
消え入るような声で自分を奮い立たせ、私はそっと
哲也にしがみついた。
あれから三年の月日が流れた…
「ねえゴリ…小指が短い女って、妊娠しにくいって
本当だったみたいね」
「ん?医者がそんなこと言ってたんか?」
「違う。玲子が言ってた」
「玲子か?あー、俺からもお礼を言わなきゃな。で、
あのバカでかい段ボールの中身は何だったんだ?」
「ベビーカーとか、おんぶ紐とかおくるみとか、
あとおもちゃがいっぱいね…全部、お下がりだけど」
「ふーん、下の女の子のお下がりか?」
「そう。上の子もう二年生だって。下の子も年小さん。ずいぶん先越されちゃったわ」
「で、小指がどうかしたって?」
「あの子の手ね、見せてもらったら、小指がね
びょーんと長いのよ」
「ふーん、お前のは?見せてみな」
哲也が私の短い小指を掴んでつまらなさそうに
見ている。
「ちょっと!ちゃんと前見て運転してよ!私達もう
二人っきりじゃないんだからね」
「諦めかけた時にできるってのも、本当みたいだな」
「きっとね、私達ヤリ過ぎで出来なかったのよ。
回数話したらお医者さんに笑われたわ」
運転席の哲也が腹を抱えて笑い出した。
「げっ、医者に回数まで話したんか?」
「だってぇ、お医者さんだもん」
「あのな、お前が淫乱なだけ!オレは普通だからな!」
「たく…失礼なゴリラね!」
私は赤信号を待って、ゴリの脇腹に思い切りグーで
ワンツーパンチを見舞った。
-完-
私の独り言
私の王子様は、白馬なんかに乗っていなかったけれど
ジャニーズ系の細マッチョでも、全然なくて…
顔はホームベースみたいな五角形で、毛ムクじゃで、
おまけに、口は悪いゴリラだけれど…
私には宇宙で一番素敵な王子様なんだ。
コメント
2021/03/06 16:14
11. 皆さんが言うように、これって文章の言葉使いが
柔らかいし、とても男の人が書いたとは思えない。
もう、エロさなんてどうでもいいって位、本当に
素敵なお話でした。
女の心をどこかに隠し持っているパパと、痺れる
哲也さんに、最大の拍手〓を送りますね。
返コメ
2021/03/06 15:14
10. 女目線の文章だから 優しさ一杯です。
見た目はガッチリ体型で好きではなかったけど 哲也の包み込む優しさで いつの間にかタイプに変身してしまいました。
女性は自分のことを思い大切に幸せにしてくれる男を タイプに昇格させられる┉
柔軟あるいは したたかな哺乳類なんですね(笑)
このロマンスアダルトを続けて欲しいです。
柔らかく女性も受け止められる秘訣なのだから。
返コメ
2021/03/06 11:47
9. エロハッピーエンドでよかったですわ~
官能小説ってより恋愛小説になってしまいましたね。
次回、期待してます。
次回から、長期連載を求むw
返コメ
2021/03/06 11:30
8. >>7 風来坊さん
おはようございます。
長文を初めから完読して頂き、ありがとうございます。
一応完成していた文を分割してupしたんですが、
思いつきでバイキンマンを入れたり、少しいじって
しまいました。
また、ぼちぼち書いて行きますね。
返コメ
2021/03/06 11:01
7. 完結、パチパチパチパチ。最後もハッピーで良かったです!!
返コメ
2021/03/06 10:14
6. >>3 YADA子さん
だから、電車の中で読んじゃダメだよって
言わなかった?前にも同じこと言ったよ。
忘れたか?(笑)
返コメ
2021/03/06 10:10
5. >>2 *あゆふわりん*さん
おはよう。男の武骨な優しさっていいですね。
それを引き出すヒロインの反応もビンゴです。
この二人、元々最高の相性だったんですね。
人はそれぞれ、心に鎧を着て強がっています。
一度、重い鎧を脱いだら、思いもしなかった
別の世界が見えてくるかも知れません。
返コメ
2021/03/06 10:01
4. >>1 かよさん
最近はコロナ禍の中、莫大な数の女性が窮地に
立たされていますね。僕も僕の回りも同じです。
これは、お伽話かも知れないけど、形を変えれば
全くありえない話でもありません。
追い詰められても、由美には根底にチャメっ気と
明るさがあります。それが救いだったのかも知れ
ません。
返コメ
2021/03/06 9:22
3.
気になって、仕事行く途中で読んじゃったから、
いま、トイレで必死に化粧直してるよ。
パパのいっぱい読んだけど、もしかしたら、これ
一番かも。
返コメ
2021/03/06 9:21
2. 優しいなぁ、ツブさんの文はいつ読んでもあたたかい。アダルトマークのついた文を読んでいるのになんか心が癒される。
自分の今の生活と照らし合わせると一点も同じところは無いんだけれど、私の
「本当は甘えたいのに」
とか
「もう若くないのにこんなこと言えるわけ無いよね」
とかを主人公やまわりの面々が言ってくれるから心がスッキリしたり、あたたかくなったりするのかもしれない。・・・なんて思った。
2人とお腹の赤ちゃんに幸あれ!
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