【デヴィルと私とゴリマッチョ】完結編 もうっ!ゴリラのくせに三十女を何度泣かせたら気が済むの!
60代前半  東京都
2021/03/06 7:06
【デヴィルと私とゴリマッチョ】完結編 もうっ!ゴリラのくせに三十女を何度泣かせたら気が済むの!
哲也の上腕二頭筋は、枕にするにはちょうど良い
硬さなんだけど、

密に生えた毛が耳をくすぐるので、私は何度も
太い腕に耳を擦りつけなくてはいられない。


「おい、何をゴソゴソ動いてるんだ?」

「だってぇ、哲也の腕の毛が耳にはいるんだもん」


課長でも哲也さんでもなく、哲也って初めて呼び捨て
にしてみた。


「わかったよ。今度会う時は剃ってくる」

「いいの、このままで。私が慣れればいいんだから」


哲也はふふっと笑って、私の左乳首をギュッと摘んだ。


「ちょっと、やめてよね」

「わかったぞ。こがスイッチだな」

「もうっ!」


肩を窄めた拍子に、哲也の忘れ形見が私の中から
溢れ出し、内股を濡らした。

私は、哲也に気付かれないように、その滴を指で中に
押し戻した。

拭き取らないのは、私の悪だくみ。 


男なんて気まぐれ。哲也が私に冷めないうちに、
彼の子種を捕まえて根付かせて見せる。


最悪な出会いを打消すために、
私は人生最後の大博打に打って出たのだから。





そんな私を、意地悪そうにニヤニヤ見つめてる
奴がいた。

ZOZOで買った安物のショルダーバッグから、
顔だけ出している、黒ずくめのバイキンマンだ。

まばたきもせず、私と哲也の様子を覗き見している。



「やだ、あいつに見られてた!」

「なにっ」

一瞬、気色ばんだ哲也も、私が手を伸ばして掴んだ
バイキンマンの縫いぐるみを見て、怪訝な顔をした。


「何だこれ?あまり可愛くないな」

「だってデヴィルだもん」

「さっき、デヴィルが…とか口走ってたの、
こいつのこと?」

「そう、あんまり私を苛めるから、お仕置きしよう
と思って買ったの。セコハンショップでね」


哲也はバイキンマンを手に取り、クルクル回しながら
つぶやいた。

「可愛くないけど、ワルにも見えねーな。こいつ」

「でしょ?買った時は、殴ったり蹴ったり火炙りに
したり…とか思ったけどね。逆に仲良くなっちゃお
かな!て思って、持ち歩いてたの」

呆れ顔で私を見つめていた哲也は、いきなり大声で笑い出して、私を抱きしめた。


「お前ってヤツは…まったく」

哲也の胸毛に蒸せながら、一緒に笑い転げた私も、
気が抜けて逆にグスグス泣き出してしまった。




本当は…

華奢な私は、細身か細マッチョな男がタイプだった。

でも、元ラガーマンの哲也は胸毛ボウボウ、身長は
一八五のゴリマッチョで、正直言ってまるでタイプ
ではない。

いや正しく言うと今の今までタイプではなかった。


でも、今はそんなゴリラの体毛までが、愛しくて
愛しくてたまらない。



「由美、さっきお前…『だったら、あなたがずっと
買ってよ!』とか口走ってたな?」

「え、そんなこと言いました?忘れて下さい。
たかが、ビッチのたわ言ですから」


私は胸の上に乗った哲也の手を振り払って、わざと
彼に背を向けた。

「お前さ、確かご両親とも死別していたよな。たった
独りで良く頑張ったな。生きていればな、もうそれ
だけで充分だ。お前の無念は俺が晴らしてやる」


涙が止めどもなく流れた。

それを哲也に見られたくなくて、私は彼に背を向けた
まま、上掛けを深く被って嗚咽した。

そんな私に哲也はさらに追い打ちをかけた。



「お前さ、嫌じゃなかったらケリがつくまで俺のところへ来い。家賃だって浮くだろ?」

「ええっ、それって…本気で言ってます?」


私は上掛けを跳ね除け、哲也を睨みつけた。
そんな気丈な仕草を見せても、唇だけは隠しようも
なく、ブルブル震えて止まらない。
 
もうっ!ゴリラのくせに三十女を何度泣かせたら
気が済むの!

涙と鼻汁で、哲也の胸毛はベタベタになったけれど、
それでも私は泣きじゃくった。

男の胸で思いっきり泣ける幸せを噛み締めながら。



「でも…ケリがつくまでなのね?」

「ん?まあ、とりあえずな…」

涙声で哲也を問い詰めながら、私は自分の強欲と
狡猾さに呆れ果てた。






デヴィルさん、グッジョブ!

さっきは悪態ついてごめんなさい。

あとは私にまかせてね。


ここからが女の正念場!もう一息なの。毛ムク王子は
まだ鞍の上。やっと白馬の尻尾を掴んだわ。後は
振り落とされないように這い上がるだけ。

  


「いいわよ。女を…甘く見ないで!」

私は哲也の耳元で、口まねだけでささやいた。


「ん、今なんか言った?」

「え、なにも…」

「いや、絶対なんか言っただろ?」

「うん…ほんとはね…もう一回だけ哲也が欲しいの。
だめ?」

消え入るような声で自分を奮い立たせ、私はそっと
哲也にしがみついた。










あれから三年の月日が流れた…

「ねえゴリ…小指が短い女って、妊娠しにくいって
本当だったみたいね」

「ん?医者がそんなこと言ってたんか?」

「違う。玲子が言ってた」 


「玲子か?あー、俺からもお礼を言わなきゃな。で、
あのバカでかい段ボールの中身は何だったんだ?」

「ベビーカーとか、おんぶ紐とかおくるみとか、
あとおもちゃがいっぱいね…全部、お下がりだけど」

「ふーん、下の女の子のお下がりか?」

「そう。上の子もう二年生だって。下の子も年小さん。ずいぶん先越されちゃったわ」


「で、小指がどうかしたって?」

「あの子の手ね、見せてもらったら、小指がね
びょーんと長いのよ」

「ふーん、お前のは?見せてみな」

哲也が私の短い小指を掴んでつまらなさそうに 
見ている。


「ちょっと!ちゃんと前見て運転してよ!私達もう
二人っきりじゃないんだからね」

「諦めかけた時にできるってのも、本当みたいだな」

「きっとね、私達ヤリ過ぎで出来なかったのよ。
回数話したらお医者さんに笑われたわ」


運転席の哲也が腹を抱えて笑い出した。

「げっ、医者に回数まで話したんか?」

「だってぇ、お医者さんだもん」

「あのな、お前が淫乱なだけ!オレは普通だからな!」

「たく…失礼なゴリラね!」


私は赤信号を待って、ゴリの脇腹に思い切りグーで
ワンツーパンチを見舞った。




         -完-





私の独り言

私の王子様は、白馬なんかに乗っていなかったけれど

ジャニーズ系の細マッチョでも、全然なくて…

顔はホームベースみたいな五角形で、毛ムクじゃで、

おまけに、口は悪いゴリラだけれど…



私には宇宙で一番素敵な王子様なんだ。



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コメント

50代半ば  大阪府

2021/03/06 9:04

1. おはようございます。
現実の娑婆世界は、シビアなことに満ち溢れていて
1度道を間違えたり、踏み外したりしてしまうと
なかなか表通りに戻れなかったりすることが多いので、せめて物語の中だけでも「1つ曲がり角を間違えたり」「1つ選び間違えたり」した為に不運な場所に迷い込んでしまった平凡な人の人生が、また幸せな道を歩き出すのは、読んでいてとても救われます。
・・・あと、「好みのタイプ」は年齢と共に外見より内面重視にシフトしていく女性が多い所を押さえているのは、「心得てるなぁ。」と思いました。

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