涙‥また涙‥息子達の通学区域対抗野球大会。(完結編)
準決勝は13時に始まった。
相手は6年生投手で、荒れ球が早く、振り回すとバットに球が当たらない。
娘のエリは、最初から振る気はゼロ。当てて走るイチロー女版みたいな奴で、意外に塁に出る。
三回裏、三番のシュンがバッターboxに立った。
しかし、シュンは何度も妻に目をやり、集中を欠いている。
『何かおかしいぞ。どうしたんだ?』
妻は答えない。
シュンは一塁ゴロに終わったが、エリが爆走してエラーを誘いホームに駆け込んだ。
大騒ぎのベンチから少し離れ、うなだれているシュンの肩に妻が手を置いた。
『さあ、もう行かなくちゃね!』
心配そうにメンバーが集まってきた。
『シュンちゃん、行っちゃうの?』
後輩達はペソをかき、四年生のヨッ君も唇を突き出して涙をこらえている。
僕は妻に詰め寄った。
『日★研のクラス変えテストなの。絶対に落とすわけにはいかないわ。それはシュンも分かっているわ』
しばらくして、シュンが口を開いた。
『わかったから!もう泣くな!』
シュンは下級生をなだめながら、僕に走り寄ってきた。
『お父さん‥』
僕はその時、すでに泣いていて、買ったばかりの携帯を開き、シュンを仲間の方に押し戻した。
★☆★
電話に出たのは、受付の女性だった。
『再試験を認めてくれなければ、残念だけどお宅とは縁を切ります』
僕はそれだけ言って電話を切った。
試合は進み、最終回の7回2アウト。得点は3対2で1点負けている。
二塁にはヨッちゃん‥
そして、顔を真っ赤にしたシュンが思い切り叩いたボールは、
フラフラと舞い上がり、
ライトの前に落ちた‥
かに見えた。
しかし、鬼の形相で飛び込んできた、相手の右手に‥
収まった。
みんな、悔しくて泣き、暴れてる子もいる。
そして、僕も妻も泣いた。
子供達の世界を知らなかった、不出来な父親が、
子供達の前で、不覚にも泣いてしまった。
そして、その三日後‥
息子は、たった一人だけの再テストに臨んだのだった。
-完-
コメント
2015/01/14 8:19
1. 良かった
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