割り切り珍百景⑥【定期の罠】白馬の王子様と交わした悪魔の契約書
(前日記より続く)
今から思えば、新宿ヒルトンで江沢との二度の逢瀬は、私の正常な判断力を完全に狂わせていたのだろう。
あの夜…
江沢はベッドのコンソールに手を伸ばし、私が飲み残したシャンパンを飲み干すと、
まだ余韻に浸っている私の肩口に軽くキスして、いきなり私との繋がりを解いた。
半端に硬さが残ったままのものを引き抜かれた私は、
「あぁっ…」とため息のような吐息を洩らしてしまった。
私の器官は、まだ江沢の形をそのまま覚えていて、
私は、代わりに入ってきた外気に驚いて、思わず脚を固く閉じてしまった。
シーツには、激しい絡みの跡がヌルッとした沁みになって残っていた。
私は身繕いもせず、ティッシュでその辺りを拭って、バスルームに消える江沢の後ろ姿を追っていた。
新人の愛人なら、一緒にシャワーに立つのが務めなのだろうが、その気力すらなかった。
【割】では、相手をイかせるために、必ずイくっ!て数度叫ぶ。
でも、本当にイかされる時って、計算した言葉なんか吐けるものじゃない。
とうに死んでしまったと思っていたのに‥
私の中には、まだケダモノのメスの血が残っていたらしい。
それを引き出したのは江沢。
そう。私はそんな江沢に賭けていたのだ。
もう、月一の【割】で財布と肉欲を充たす不安定な私とサヨナラ出る。
そう思ったからだ。
「泊まっていくか?明日僕は札幌に飛ぶから朝は早いよ」
シャワーが弾ける音が止んで、江沢が私に向かって叫んだ。
「何かお世話しなくていいの?」
私は重い腰を上げて、バスローブを羽織った。
「今から10分くらい大事な話があるから、その前に亜紀もシャワー浴びておいで」
戻ってきた江沢が部屋の灯りを全灯に戻すと、
新宿の夜景を背景に、全裸の私の姿が、窓ガラスに写った。
女神像のような誇らしげな私。
でも、私がそんな私を見たのは‥
その時が最後だったのだ。
★☆★
「僕のパートナーでいる間、他の男と関わりを持たないって約束できるかい?」
江沢は、ガラス張りの事務机に肘をついて、鋭い目で私を見上げた。
「勿論。約束するわ」
江沢は頷くと、デスクから茶封筒を一枚取り出し、
その中に数枚の札を入れて私に手渡した。
「今日はまだ契約外だからね。これは、交通費と僕の気持ちだよ」
戸惑っている私に、江沢は言葉を続けた。
「亜紀はクレジットカードを2枚持っているって言ってたね。ちょっと見せてごらん」
江沢は、私がバックから取り出したカードを2枚、机に並べて首を横に振った。
「このカードじゃ、手続きが煩雑で事務方が嫌がるな。」
「毎月の手当ては、銀行提携カードで支払うからね。
買い物枠の20万円までは、経費処理するけれど、超えた分は亜紀の負担になるかんだよ」
私は、はいと頷いて江沢に微笑みかけた。
「それから、このカードは1日預かるよ。キミの信用状況を新しいカードに移したり、プラチナカードに移行するのに必要だからね」
「えっ、預けるんですか?」
私の脳裏に一瞬不安が過ぎったが、それを打ち消すように江沢は続た。
「そう。でもカードってね、大切なものだから、口約束じゃ預かれないんだよ」
江沢はそう言うと、便箋を一枚剥がして、カードの預かり証を手書きで書き始めた。
彼は運転免許証を私に見せ、お互いの現住所と本名、電話番号を書き入れた預かり証を2部作った。
最後に私は、それにカードの暗誦番号を書き添えた。
(何か怖いな‥)
そう思ったけれど、私はそれを口には出せなかった。
最初の逢瀬の時、
お互い基本的な信用さえ出来ないなら、この話はなかった事にしよう。
そう言った江沢の言葉が、私の脳裏に蘇ったからだ。
そして、それが‥
それが‥すべてだった。
私はそれ以降、江沢に会う事はなかった。
先月、◎◎地裁から呼び出しがあるまでは‥
―完―
これは、カード詐欺被害者に墜ちる代表的なパターンを再現したフィクションです。
その後、130万円の被害にあった亜紀は警察に被害届を出しますが、
逆に警察に丸1日拘束されます。
預かり証を書き、犯人と同意の元でクレジットカードを悪用し、クレジット会社に損害を与えようとした‥と判断されたからです。
これは、詐欺罪と言う刑事事件にはなり得ないよう、巧妙に仕組まれた犯罪でした。
それ故、事件の解決。7人グループの主犯格4人の逮捕に至るまでの道のりには、4年の歳月がかかりました。
多発する事件の存在を明るみに出してくれた、テレビ放送局。
そして何より、被害者を組織にまとめて、解決に導いた被害女性の存在が 大きかった事は、言う間でも有りません。
あれから亜紀は、精神的にも立ち直り、
サイトで地味ですが真面目な彼に巡り会い、
今は、平穏な結婚生活を送っている事を、最後に報告いたします。
コメント
2015/09/18 20:26
33. >>30 ツブネコ
さん
その判別法、納得です。
色々と書きたいことはありますが、今は伏せておきますね!(笑)
返コメ
2015/09/18 20:11
32. こんばんは。
ときめいて嬉しくて、愛されて自信にあふれていたのに。
残念で、悲しくて打ちひしがれただろうな。
途中、不安を感じたからこそよけいに。
あの時、思いとどまっていたらって。
後悔先に立たず。
それでもプリティウーマンに憧れる私
返コメ
2015/09/18 19:57
31. こんばんは お疲れさまです(^-^ゞ
怖い話しですね(>_<)
普通の女性は騙されてしまうでしょう
巧妙で(。>д<)
私はクレジット会社に5年勤めた事があるから多分大丈夫(*^-^*)
返コメ
2015/09/18 18:08
30. >>28 アギーさん
怪しいヤツってさ、日記書いてても、
必死こいたアピばかり目立って、余裕がないよね。
あと、ウソつき=怪しいヤツが書く文章の大きな特徴は、自虐ネタがないこと。
これは、オレの判別方。
かなり正確だと思うよ。
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2015/09/18 17:51
29. >>27 リyo汰さん
可愛ゆい姫様ねぇ~
出そうで出ない‥つか
いそうでいない‥つか
とにかく、巡り会えねぇなぁ(笑)
もしかしたら、秋深い頃とかなぁ(笑笑)
返コメ
2015/09/18 17:10
28. 嘘つきと犯罪者が暗躍してますよね。
いいこと書いていても、犯罪者だったりするのが紛れてるから、ここは怖い。
返コメ
2015/09/18 16:26
27. >>26 ツブネコ
さん
え~!!初耳!!
ツブネコさんをメロメロされる
そのかわゆぃお姫さまはどこっ?!笑
ここにも確かにぃるね~爆
嘘なんてメッキは剥がれてくるもんね!
屁理屈並べてブレブレなってて
見苦しくて笑ってしまったけど。。
返コメ
2015/09/18 14:53
26. >>25 リyo汰さん
平和過ぎて眠くなるよ(笑)
騙すより騙される方ねぇ、オレもなぁ、
あと一言ちょっと騙せば、可愛いあの娘を頂けるってのに、
その、あと一言が言えないんだよ(笑)
ま、ここにはウソで固めて、自分でも分からんくなってるヤツもいるけどさ(笑)
返コメ
2015/09/18 13:59
25. >>23 ツブネコ
さん
平和ぢゃなきゃダメ~!!笑
立ち直るのは自分だもんね。。
すごぃ辛かっただろぉなぁ。。って思った。。
人を疑うよりも信じるほぉなあたし。
騙すくらぃなら騙されたほぉが。。なんて思ったら
ダメだなって勉強になった。
返コメ
2015/09/18 13:40
24. >>22 .:*:鰺.:*:°∴。.¨さん
オレだってきれい事書くから、人の事は言えないけどね‥
年がら年中、きれい事とか拾った知識をひけらかしているヤツって、
ほとんど中身はピーマンだと思うよ(笑)
最近戻って来られたランカーさんとか、もう一度小学校で国語習ってきな!
つう、寂しいレベルだよな(笑)
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