14か月目のマドンナ⑧ 小学生のレッスンの後、Naoは僕の膝に跨がって
60代前半  東京都
2015/11/04 6:08
14か月目のマドンナ⑧ 小学生のレッスンの後、Naoは僕の膝に跨がって
ガレージにチャリを乗り入れると、僕は吹き出す汗もそのままに、石段に座り込んでしまった。



真夏の五時は、まだ真っ昼間だ。



おまけに、大門寺家は多摩川を見下ろす南西斜面にあるので、夕方の暑さは並みではなかった。



それでも、急いだ甲斐が合ってピアノ教室がハネるまで後二十分はある。



僕は洗車用の蛇口を捻って頭から水を被り、



尚子さんの117クーペのワイパーに掛けてあったタオルを一枚失敬して、顔と髪を思いっきり拭った。



やっと一息ついて、デッキチェアに横たわっていると、


尚子さんの澄んだ歌声が聞こえてきた。



僕は、この時間が好きだった。



うさぎ追いしあの山‥♪
小鮒つりしかの川‥♪


夏が来れば思い出す‥♪
遥かな尾瀬、遠い空‥♪



生徒達が弾く、まだよちよち歩きの伴奏に合わせて、尚子さんが歌う。



僕が息せき切らせてここに駆けつけた訳は、そんな尚子さんの歌声を聞きたかったからだ。



夏休みに入ると、尚子さんは火曜日と金曜日を小学生のレッスン日に当てた。



リキは、その日だけは裏庭のリキ部屋に閉じ込められてしまう。



リキの巨大さに驚いて、泣き出す子がいるからだ。



そんなわけで、僕が尚子さんと会う日も、教室が早く終わる火曜日と金曜日に合わせた。



今日は、八月最初の火曜日だった。



レッスンは後十分ほどで終わる。



僕は尚子さんの歌が良く聞こえるように、駐車場から道に出た。



大輪の鬼百合が数本、垣根のすき間から顔を覗かせていた。



この時間帯には、緩やかな川風が多摩川から坂道を吹き上げてくる。



垣根のてっぺんには、ナツアカネが二羽止まっていて、その透明な羽根がふわりふわりと揺れていた。








僕が尚子さんと再会してもうすぐ3か月になる。



先月までは週二度の尚子さんに会える日が待ちどうしくて、



僕は、会うなり尚子さんを抱きかかえ、そのまま貪るように重なっていた。



尚子さんは、そんな野獣のような僕にも、優しく耐えてくれた。



でも、長い二回目が終わると、ふとため息を吐いて、少し淋しげな顔を見せることが多くなった。




中学以来、僕のマドンナだった尚子さん。



彼女から性の手ほどきを受けられた僕は、幸運だった。



有頂天になって、本末を見失っていたのだろう。



たまには、我慢することだって彼女への思いやりなんだろう。



そんな風に自分を鎮めているうちに5時半になった。


生徒達が玄関から賑やかに出てくる。




瀬戸は日暮れて夕波小波♪
あなたの島へお嫁に行くの♪



子供達を見送るように、尚子さんがピアノを弾き始めた。



イントロの後、控え目に歌う尚子さんの歌声が聞こえた。



瀬戸の花嫁。


それは、二人だけの暗号‥


「早く来て!」のサインだった。




     ★☆★



シャワーを終えて、ジャージに着替えると、いつものように尚子さんはコーヒーを煎れて待っていた。



豆から煎れるコーヒーは、家で母が煎れるそれより格段に美味しかった。



でも、一生懸命作ったと言うクッキーは黒ずんで堅く、


お世辞でも美味いと言える代物ではなかった。



大門寺家のキッチンは、いつもピカピカで、


鍋釜どころか包丁ですら使われた形跡が殆ど見あたらなかった。




「美味しいね!」



心にもないことを言いながらクッキーに噛みつくと、ガリガリ割れる音がする。



「あら、ちょっと堅かったしら?」



「いや、普通だろ」



「こうして食べればいいのよ」



尚子さんは、コーヒーにしばらく浸けてそれを口に運んだ。



僕は笑ってしまい、尚子さんの真似をしながら、クッキーを口にくわえ、



テーブルの下から彼女の手を引いた。





子供達にピアノを教え、小学唱歌を一緒に歌う尚子さんの優しい眼差しが、


妖しいメス猫の目に変わって、しばらく僕を睨みつけた。




この劇的な変わり目が大好きで、僕は彼女の手を引き、向かい合わせに僕の膝の上に座らせた。




「さっき待ちながらね、色々考えてたんだよ」




「なに考えてたの?エッチなこと?」




尚子さんの両手が僕の首に回り、小さくてぽっちゃりした下唇が僕の唇に近づいてくる。



「こんなに素敵な人なのに、最近の僕は裸の尚子さんばかり思い浮かべている。そんな自分がさ、時々イヤになる」



尚子さんの顔がグッと近づいて、尖った舌が僕の歯を舐めた。



「あまり美味しくないクッキーの味がしたわ」



僕は、くくっと笑ってしまい、


「ミルクを入れ忘れたコーヒーの苦い味がした」と返した。



額をぶつけ合いながら、僕達はククっと笑った。



「考え過ぎよ由宇。あなたが今したいことは、きっと私もしたいこと」



「いいのかな?」



「ダメって言ったら我慢してくれるの?」



「無理かも‥」



「でしょ?だったらそんなこと言わないの!」



尚子さんは、笑いながら僕のジャージの紐を緩めた。



「そうね、じゃあ今日は一回にして、終わったら自由が丘にご飯食べに行きましょうね」




跨がった尚子さんの全体重が、脚にかかって僕は彼女の腰を支えた。




尚子さんの脚が僕の両脚を挟んで、痛いほどに締め付けた。




「由宇‥」



「なに?」



「抱っこしてベッドに連れてって!」




尚子さんは、いつになく決め付けるような口調で僕に命令した。





       ―続―








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コメント

70代以上  東京都

2015/11/08 22:22

67. (^-^)
つぶねこさんのお母様と私の祖母は年代が近い可能性もありますよね。
つぶねこさんが、神戸の山を走り、川で魚、広い自然の中を……開発前の自然って、凄かったと聞きます。
文章が広がり、良いですよね。

(^-^)

70代以上  東京都

2015/11/08 22:10

66. 
日記に、故祖母が歌ってくれた歌が出た、日記に歌って初めてです。
うさぎおいし、あの山、祖母は、かの山、
歌詞を読むと凄い良い歌。
かの山、おそらく固有名詞に出来ないから彼山って書くのかな?って、人それぞれに、歌詞のとらえ方はあるかもしれないですよね。
音楽の教科書に出れば良いのになぁ。ふるさと良い歌は良いですね。

60代前半  東京都

2015/11/07 19:53

65.  >>64 SMClub[ガラスの仮面]女主宰†りなさん

初コメでしたね。ありがとう!

そうですね。音大出は普通、煮ても焼いても食えません(笑)

よほど相性が良ければ別ですけど‥

SMクラブ・ガラスの仮面って、かなり凄そうですね(笑)

2015/11/07 13:23

64. ツブネコさん、チャオ(^^)[ハートたち(複数ハート)]

尚子さんの命令って…優しいですね[ウィンク]
音大出身のS女って、クセモノ・ワガママ女が多いですよ!美大出は、モデル経験あったりして、まだ相手に合わせる感覚も豊かです[わーい(嬉しい顔)]

出遅れましたけど、日記に初コメ(…?と思います)しておきます。
後ほど過去日記にもお邪魔するつもりですが…遅れるかもしれません。

40代半ば  鹿児島県

2015/11/06 12:17

63.  >>62 ツブネコ[芽]さん
3人だよ。日記に関係無くなってきた(;^_^A

これにて失礼(^O^)/

60代前半  東京都

2015/11/06 12:11

62.  >>61 [クローバー]あゆ ふわりん[クローバー]さん

こんにちは。ママさん大活躍ですね!お二人でしたよね。

ホント、そのパワーには頭が下がります。

40代半ば  鹿児島県

2015/11/06 10:01

61.  >>60 ツブネコ[芽]さん
授業参観や家庭教育学級、放課後教室、ランニング教室…。
18時過ぎまで縛られていました。

現実的なコメでスミマセン。
私、マジメなのかフマジメなのか。
自分でもわかりません(笑)

60代前半  東京都

2015/11/05 22:46

60.  >>58 [クローバー]あゆ ふわりん[クローバー]さん

こんばんは。

忙しかったの?遅かったね。

♂♀[黒ハート]はもう一度軽く(笑)

それからエンディングだね。

30代前半  埼玉県

2015/11/05 22:41

59.  >>57 ツブネコ[芽]さん

はい、また遊びに来ますね!

40代半ば  鹿児島県

2015/11/05 22:36

58. 続くんだ~。

あとちょっとのところでおあずけなんて( ̄~ ̄;)

続きが楽しみです[わーい(嬉しい顔)]

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