世紀の大不倫とその結末‥迷い蝶⑧(完結編)
60代前半  東京都
2016/08/10 6:47
世紀の大不倫とその結末‥迷い蝶⑧(完結編)
排卵日が近づくと無性に由宇が恋しくなった。


でも、大手電機メーカーに就職し福岡支社に配属になった由宇とは、明らかに会える回数が減っていった。


それでも、私達は月一の逢瀬を重ねていた。


中間点の岡山、京都、大阪、神戸‥


観光もそこそこに、私達はお互いの体を生で貪りあった。


安全日だと偽っても、私は生を貫いた。



それは、無機質なゴムに二人の粘膜を遮られたくなかったから。



全てを捨てる覚悟だって出来ていた。



私は由宇と繋がりを解いた後も、脚を強く閉じて
彼の種を私の中に閉じ込めた。


一滴の由宇も手離したくなかった。





でも、私は妊娠することはなかった。


私にはきっと欠陥があって、子供なんか産めないんだ。


神様だって、こんな半端な私に子供なんか授けてくれない。



だいたい、出産などと言うグロテスクな儀式に私は耐えられるのだろうか。


怖い。恐ろしい。


でも、それがもし由宇の子なら…私はどんな事にだって耐えて見せる。



その頃はそう思っていた。

狂っていたのだろう。





夫、達也への負い目は常に私の中にあった。


留守がちな達也だったけれど、彼は医局での地位を確実に上げ出世していった。



達也は、常に何も言わなかったけれど、


優秀な医者である彼が、私の体の変化に気付かなかったとは、今は思えない。



達也は、全てお見通しだったのではないか?


だったら、私は彼の何だったの?


長い出張先に、彼女がいたとしても不思議じゃない。


でも、何も言わない彼には、私だって何も言えない。



そんな達也は、以前より明らかに私を求めて来るようになった。


私は求められれば、人形のように、でもそつなく彼に応えていた。


由宇に叩き込まれた性癖をしっかり封印して…



微笑みと達也の背に手を回す行為だけが、私ができる夫へせめてもの罪滅ぼしだったのだ。





そんな二年半の月日が流れ、私は三十三になった。


社会人として男盛りを迎えて行く由宇を、私は眩しく見ていた。


今までは考えても見なかった年の差を、ぼんやり意識するようになったのもその頃だ。






そして、更に気が遠くなるほどの月日が流れた。




     ★☆★




「凄ーい!お母さん、体操男子、団体で金メダルだって!」



次女の由香が、テラスから私とマミに手招きをする。



「マミさんもバアバも部屋に戻りなさいよ。山は紫外線が強いのよ。顔のシミが増えるわよ」



私の二人の娘、長女の愛と由香は、早起きしてリオオリンピックの速報を見ている。



この二人の娘はまるで性格の違うので、とても仲が良い。



「まったく由香のヤツは言うことがいちいちキツいね。でも憎めないから不思議よ」



マミの問いかけを、私は静かに笑いながら聞き流した。



私には、ここから動けないわけがある。


四年生になった孫の由一郎が、次から次へと色んな獲物を私に見せにくるからだ。



私は、そんな由一郎を溺愛している。




「バアバ!見て見て!」


近くの雑木林から戻ってきた由一郎は、真っ白な捕蝶網の中を私に見せた。


「へえ、ユウくん、あまり見かけない蝶々ね」



「アカボシゴマダラって言うんだよ。ほら‥」



「ふーん、きれいな蝶々ね」



それは、アゲハ蝶ほどの大きさで、色も鮮やかな
蝶だった。



「この蝶々ね、本当は沖縄の蝶々なんだよ。台風で飛ばされてきたり、誰かが幼虫を放して増えたんだね」



「へえ、そうなの?ユウくんて凄いね。理科の先生みたい!」



「でもね、ママは虫が大嫌いなんだよ。だから僕はバアバが好きなんだ」




私と由一郎のやり取りをミカがニヤニヤ笑いながら見ている。



「ユウくん、迷い蝶かも知れないわ。逃がしてあげなさい」



「迷い蝶ってなに?」



「そうね、今度ゆっくり話して上げるね」



「ぜったいだよ!」



「はい、約束ね」



私が出した小指に、由一郎が小さな小指を絡めてきた。


「うん、でも明日まで虫かごで飼っちゃダメ?」



「ダメダメ、バアバがカメラで撮って上げるから、バイバイしましょうね」


「うん、分かった」



カメラを取りに駆け出した由一郎の後ろ姿を見やりながら、ミカが意地悪そうに私の顔を覗き込んだ。



「ほんと、誰に似たんでしょ?血は争えないわね」



「ミカ、何度も言うけどね、愛も由香も達也の子よ。変な詮索しないで」






今日の富士山は、少し霞んで見えた。



三十七年前‥排卵日の二日前だった。



達也の子、愛を産んで二年後、私が泣きながら由宇に別れを切り出した日、


ベッドから見えた富士山も、今日のようにい霞んでいた。






由宇には、私がお腹に由香を宿した時点で、本当に別れを告げた。



だから、由宇は由香が生まれたことも、



その由香に由一郎が生まれたことも、な~んにも知らない。





子供や孫達には罪はない。

罪は私が墓まで背負って行けば良いんだから‥






迷い蝶、遠い昔由宇が多摩湖畔で見つけたシジミチョウ。


台風や暴風で巻き上げられ吹き飛ばされ、本来の生息地でない場所で発見される蝶のことらしい。


多くは、新しい環境に馴染めずに死に絶えてしまうらしいが、


メスはオスに比べるとふてぶてしく生き延びることもあるらしい。






卵を孕んだメスは更に強く、血にまみれても次の世代に運命を託す。



私もそんな迷い蝶。でも私は今日まで生き続けた。



強く生き延びて好きな人の血を残した。






だって女だから。


救いようのない女だから。


女に生まれたのだから。          



                  ―完―


不倫を題材にした官能ものでしたが、

最後は少し急いでしまいました。



本人は無意識ながら、肉食系悪女の令子の生き方には、多くの異論もあるでしょうが、


なにもかも全部含めて、


女ってずるく、生々しく、官能的で、でも優しい




まあ、そんな話でした。








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コメント

60代前半  東京都

2016/08/10 16:42

18.  >>15 ゆういちろうさん

こんにちは[晴れ]

ゆういちろうさんの書く話とは、登場人物の数や事象の多さがまるで違うので、比較の対象にはなりません。

僕には、あんな緻密な話は書けません。

でも、テンポの良さってのは絶対必要ですね。 この話は中盤の絡みシーンがしつこ過ぎました[バッド(下向き矢印)]

70代以上  山口県

2016/08/10 15:44

17.  >>6 ツブネコ[芽]さん
これからがもっと暑くなるから気をつけてね。

70代以上  東京都

2016/08/10 15:39

16. ツブネコさんこんにちは(^^)
①から一気に拝読しました。
夫と以外の子どもを産んで、こんな強かに生きていける女性がいたらすごいですよねぇ…

もし書き直して、読ませていただける機会があればお願いしますm(._.)m

40代後半  愛知県

2016/08/10 14:50

15. こんにちは。

大河的ストーリーを堪能させて頂きました。

やはり、話の流れをスピーディーにしなければならないなあと、自作と比較して反省しきりな気持ちになりました(>_<)

60代前半  東京都

2016/08/10 14:16

14.  >>13 [黒ハート]
さん

これは女目線だけれど、僕が書いてる話だからね(笑)

あなたの雫なら一滴だって零したくない‥と実際言われたら、

うーん、ちょっと怖いかも(笑)

20代半ば  東京都

2016/08/10 13:35

13. 脚を閉じて‥一滴の由宇も手放したくなかった。

これ、エロ過ぎくない?
ほんと、こんな気持ちになったら怖いよww

60代前半  東京都

2016/08/10 13:12

12.  >>10 信太さん

書き直すかもだけど、ここには投稿しないよ。

⑧まで書いたけれど、読み直すと全体的に流れが悪いな[バッド(下向き矢印)]

改善点いっぱいだよ。

60代前半  東京都

2016/08/10 13:05

11.  >>8 [ハート]Mr・Crazy for you[ハート]さん

こんにちは[晴れ]

ハンネが華麗に変わりましたね!

夏は厳しいけど、去って行くのも寂しい。

70代以上  埼玉県

2016/08/10 13:01

10.  >>9 ツブネコ[芽]さん

えぇー!
書き直すんですか?

書き直しは、半年位先がいいわ。
やっとこ時代が今、オリンピック開催で
完結だから。

人肌恋しい冬に、、、エロだして

60代前半  東京都

2016/08/10 12:40

9.  >>4 信太さん

昭和もバブル前の話から、一気に平成末期に話を飛ばしました。

タイムマシンに乗ったみたいだね。

この話、最初の出会いが安直だから、最初と最後に少し手を加えて、まじめに書き直してみようかな?

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