レジ打ちの女性
20代前半  和歌山県
2010/09/08 21:55
レジ打ちの女性


あるところに

何をしても

長続きしない女性がいました


つまらない やりたくない 

私のやりたかった事じゃない




言い訳ばかり




大学のサークルも

就職してからの仕事も

すぐ辞めてしまう



気付けば

彼女の履歴書は

たくさんの職歴が

並ぶようになった



『どうせすぐ辞めるんじゃない?』

『ちょっと今回はねぇ…』

『これじゃあ信用出来ないな』



いつしか正社員として

彼女を雇う会社は



無くなっていた…



その後

派遣社員となるも



やはりすぐ

辞めてしまうのだった




こんな私じゃダメだ



ガマン強くなりたい


でもどうがんばっても

なぜか続かない…



こんな時にきた仕事が

スーパーの

レジ打ちだった



しかし 数週間後

単純作業がイヤになり

結局また

辞めたい衝動が

彼女の心を襲う



そんな矢先 電話が鳴る



田舎の母からだった


『もう、帰っておいで』


母の一言に心を固め

辞表を書き

荷物をまとめだした時



あるものを見つける



それは子どもの頃の日記だった


『ピアニストになりたい』


はっきりとそう書かれていた



唯一 長く続けられたもの



それがピアノだった…



彼女の中で

静かな変化が起こった



もう逃げるのはやめよう




お母さん、私

もうちょっと頑張ってみる




決意の証が

雫となって頬をぬらした



ピアノも練習するうちに

鍵盤を見ずに

弾けるようになった




ひょっとしたらレジも…




彼女は特訓を始めた



大好きだった

ピアノの弾くように



彼女はいつの間にか

レジ打ちの達人となっていた



変化はすぐにあらわれた



お客様の顔をみる余裕ができ

次第に覚え

話しかけることが

できるようになった


あら?鯛ですね!

いいことがあったんですか?


わかる?

孫が水泳で賞をとったの!




それはよかったですね!

おめでとうございます!


彼女は

たくさんのお客様と

お話ができるようになった



そんな時

ある事件が起こる



それは店内アナウンスが

何度も流れるほど

忙しい日だった




お客様



どうぞ空いてるレジに

おまわりください



重ねて申し上げます



どうぞ空いてるレジに

おまわりください




彼女が見回してみると



彼女のレジにだけ

お客様の長い列が…




お客様

どうぞあちらのレジへ




イヤよ

私は彼女と話に

ここに来てるの




私も同じよ

だからこのレジに

並ばせておくれよ


その光景を目にして

彼女は手を思わず止めた



あふれる想いは

歓喜の雫となり



その場に泣き崩れた



その後も レジからは

会話が途絶えなかった



ほどなくして彼女は

レジの主任となった



そのまま

新人教育も担当する




彼女の履歴書が

その後どうなったかは



誰も知らない


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コメント

60代前半  東京都

2010/09/09 17:22

3. 
SORA(。・ω・。)
メッチャいぃお話しぢゃん☆

30代後半  大阪府

2010/09/09 0:45

2. 俺を殴った旧友もそんなやつだったが…

今はどうしているのだろうか…

30代前半  東京都

2010/09/08 23:28

1. いい話しだ。
必要とされる為に
人は生まれてくるかな?
と思た。。

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