昔､俺が高校一年生の時､ｸﾗｽにAという女の子がいた｡入学当初俺が彼女に抱いていたｲﾒｰｼﾞは､少し太っているけどよく笑う笑顔の似合う子だった｡でも入学して１ヶ月経ったか経たないかの時､急に彼女から笑顔が消えた｡学校にもたまにしか来なくなった｡俺は特に彼女と話したことはなかったし好きでもなかったけど､少し気になった｡ある日､彼女の笑顔が消えた理由が分かった｡同じｸﾗｽの男にいじめられているらしい｡確かに､彼女が学校に顔を出すと男は吐くような真似をしたり､わざと彼女に聞こえるように彼女の悪口を言っていた｡周りの奴らも､本当にそう思っているのかわからないがその男に話を合わせていた｡たまに学校に来るたびに彼女は悲しい顔をしていた｡俺は彼女の笑顔を忘れた｡それから何ヶ月が経って､彼女は出席日数が足りなくて留年になった｡俺は､彼女に何もできなかった自分に腹が立った｡一年生の残り半年間､彼女は、学校に来ることはなかった｡先生がAさんは四月からもう一度一年生をやるみたいな事を言ってたから､ほんの少しほっとした｡でも､またあの男に彼女がいじめられたらどうしようという不安がよぎった｡でも､その時は俺が守ろうと決めた｡

四月｡俺は目を疑った｡廊下ですれ違ったのは間違いなくAさんだった｡新入生といたけど､学年のｶﾗｰが俺と一緒だったからすぐに分かった｡でも､俺の目に映った彼女は､もう半年前の彼女じゃなかった｡物凄くｽﾀｲﾙも良くなっていて､化粧もしていて､驚くほど可愛いかった｡周りの男達も振り返るように彼女を見ていた｡本当にそこらのｱｲﾄﾞﾙより可愛いかった｡俺は瞬時に､この半年間で彼女が物凄い努力をした事が分かった｡そして何より彼女は笑っていた｡俺は忘れていた彼女の笑顔を思い出した｡あの時と同じ笑顔だった｡俺は思った｡俺なんかが守らなくても､彼女は戦えると｡というより､あの男も彼女の変身振りを見たら何も言えないだろう｡胸を張って歩く彼女の中に､いじめられていた頃の悲しい顔の彼女はもういなかった｡







彼女はあの男に勝った｡