ある歯科医院でのこと。
私は予約時間の少し前にその歯科医院に着いた。
医院の前の道に、1台の軽自動車が停まっていた。誰か患者さんが停めたのだろうと、さして気にも留めなかった。

さて、受付を済ませ待合室で呼ばれるのを待っていた。
診察室から、１人の老婆が出てきた。腰がいくらか丸くなったまま、よたよたと出てきた。
受付の女性がその老婆の顔を見ながら名前を呼んだ。反応が無く、もう少し大きな声で名前を呼ぶと、老婆はゆっくりとそちらへ顔を向けた。
会計と次回の予約日を決め、受付の女性が診察券の裏の予約欄に書き込むと、老婆に「お大事に。」と言いながら手渡した。
老婆は小声で一言二言呟くと、ノロノロと靴を履いて外の道に出た。
あーこれで次は私の番かなと少し緊張していると……。
医院の玄関のドアがガチャリと鳴って先ほどの老婆が入ってきた。
モタモタと受付の前に行くと、受付の女性にたずねた。
「あのう、次はいつ来たらいいでしょうか？」
「はいはい、さっき診察券の裏に書いたでしょう？そう、その裏を見て…。その日にまた来て下さいね」
「あー、これね。はい、ありがとうございました」
そう言うと、腕にぶら下げていた薄汚れた手提げ袋にその診察券を押し込んだ。
待合室の中でやれやれという空気が流れ、皆が老婆の丸くなった背中を見送った。
私は腰掛けたまま、待合室の窓から、前の道に出た老婆の姿を目で追った。つまずきでもしないかと心配だったからだ。
次の瞬間、私は自分の目を疑った！
前の道に停めてある車に老婆が乗り込んだからだ。運転席に！
本当に運転して行くのか？目が離せず見つめていると、老婆は運転席に座ったまま、ぼうっと前を見つめたまま動かない。誰か迎えを待っているのか？５分位経っただろうか？おもむろにエンジンをかけ、相変わらずモタモタと、その車は走り出した…。
高齢者の運転する車の事故で、痛ましい事故が後を絶たないこの頃。
どうかこの老婆が事故を起こすこと無く、帰りつくように、出来ればもう２度と乗らずにすむように！と祈るような気持ちになった。


どう？怖かったでしょ？(笑)本当にあった話よ。
幽霊ではないよー(^o^)
だけどお化けより怖いかもよー(((・・;)
チャンチャン♪