諦めるところ
陸上競技場に、知り合いのお嬢さんの応援に行きました
お嬢さんのお友達とも、面識があります
短距離と、やり投げと、中距離と…
応援の声が届くかな?
会えるかな?
行けば何とかなるでしょ!
何年ぶりかの、陸上競技場です
応援席の中ほどの、日陰の席に座りました
「おばちゃん!」
知り合いの子のお友達が、私を見つけて声をかけてくれました
「あら!見つけてくれて、ありがとう!」
心地いい風が吹き抜けます
「☆ちゃんは?」
「11時半からです」
知り合いの子やその子のお友達も、ベンチの後ろに集まってきました
「うちは、3時」
「うちは1時!」
みんな、見事にバラバラです
後ろに立っている中距離の子に、夫がプレッシャーをかけます
「1着でゴールしろよ」
「え~?!むりむりむり!たぶん、ドベやけぇ」
「諦めずに走って、最後まで手を抜かないでね」
私が言いました
目の前では走り幅跳び、トラックの中では砲丸投げ
目標地点を見つめて、全力を出します
1500が、向こう側からスタートしました
遅い子は、半周遅れです
それを見ながら、夫が聞きました
「マラソンは、ないんか?」
後ろに立っている子が驚きます
「え~っ?トラックを100周以上グルグルしたら、目が回るよ?」
「周回遅れの確認が難しそうね」
私が笑いました
「そうか?」
夫は不満そうです
「え?!1000周?」
その子は、夫の不満そうな声を、計算間違いと思ったようです
「105周くらいだから!1000周も回ったら、溶けてバターになるから!」
私が言いました
「やろ?間違えたかと思った~」
そうじゃなくて、「バターになるわけないやん」って言うところでしょ…
競技に励む見知らぬ子ども達を応援していると、風に乗ってツンと鼻をつく臭いがきます
呼吸に差し障ります
臭いのする方を見ると、風上に汗まみれの男子が6人座っていました
「この席、ちょっと無理かも…」
眉をしかめる私に、察しがいい女の子が、全部を言わなくても返してきます
「おばちゃん、それは諦めるところよ」
そう?
ん~!
諦めるのは、むり…
「そろそろ、お昼ご飯よね?もう帰るから!ガンバるのよ~」
臭いに負けて、お昼前に退散しました