「あの子は、スパイだよ」
　
20年ほど前から家に出入りする、長男同様の男子が、しょっちゅう遊びに来る女子のことを、私に教えてきて２週間以上が経ちました

フェイクニュースを流して彼女がスパイだという証拠を掴みたかったのですが、ネタを作り続けることに疲れてしまいました

それと、元来の飽きっぽい性格も災いしました

長女と相談して、スパイ女子を問い詰めることにしました


一昨日の午後、女子が遊びに来た時に、彼女に内緒で、彼女の様子を長く見ていたはずの元カレと、スパイ情報を教えてきた長男も呼びました

元カレはお仕事終わりで来たのですが、肝心な長男が８時を回っても来ません

お仕事終わりで腹ペコな元カレ君を、ここで長く待たせることはできません

「あのね…」
二人を前に、女子にスパイ疑惑があることを話しました

「何の話ですか？！」
１年以上、会ったことも話したこともないと言います

次女と連絡を取り合っていることや、私達家族の会話を筒抜けに喋っていることをや、次女と会っていること等、長男から聞いた内容を確かめました

「その日は確かにカラオケには行きましたけど、高校の同級生とですよ」

証拠の写メもあります

「あれあれ？」

仕事から帰った長女が合流して、さらに女子に尋問が続きます

女子の説明と長男からの情報が、噛み合いません


でも、彼女にしか話してないことを、翌日には長男が確かめに来ていました

「どうしてヤツがその情報を持てる？」

そこが、ナゾです

「もしかして、盗聴器があるんじゃない？」
何気なく私が呟きました

居合わせた全員が、顔を見合わせました

「まさかぁ…」
一斉に、コンセントを見ます

居合わせた他の男子が、携帯を開いて盗聴器発見器をネットで探します

「ありました！高いのは５万以上しますけど、安いのは950円です」
自慢げな顔で報告されました

みんなが、顔を見合わせて笑います
「その金額の差は何なの？」

受信ヘルツの違いを説明する男子を横目に、身の潔白が証明できない女子は泣きそうになっています

「何のためにウソを言われて、ウチがここに来れんくされるよるんか、訳がわからん…」


どんなに待っても、長男が来ません
入れたメールに、返事は来ません
電話を長く鳴らしても、出ません

長男を待ちながら話していたら、４時間が経っていました

「連絡もなく来ないヤツが、一番怪しいよね」
私の言葉に、女子が少し嬉しそうです

でも、長女は情け容赦ありません

「ウチにとっては、シロじゃないってことは、クロじゃけぇね！」と、言い放ちました

女子が俯きます


私の中では、長男のように思っていた男子の、二重スパイ疑惑が確定的になってしまいました

理由と動機を確かめずにはいられません

それと盗聴器疑惑

確かめ方を、考えています