放置される(全3話#1)
10年くらい前に夫が縁台の部材を貰って、作りもせずに差し掛けの下に放置していました
貰ってきた時から説明書がなくて、重ねられた部材の横に、ちょこんと部品箱が置いてありました
幅は2,700、出幅は1,500
板を見ると、寸法はだいたい想像できます
猫の額ほどのお庭には、大き過ぎる縁台です
包んであった防水シートは長年の風雪と台風に耐えられなくて、数年前からは部材が剥き出しになっていました
昨年末の晦日と大晦日の2日間、何を思ったのか夫が重い腰を上げて、縁台を組み立て始めました
(今年は年末のゴルフに行かないと思ったら、縁台作りって…)
手伝いに、うちに遊びに来る男子を使っています
どこのお家も、この2日間はお正月の準備をすると思うのですが…
駐車場で北風に吹かれながら作業する2人を無視して、私は家のことをしました
「バカがビス穴2つ共ビスの頭を折りやがって、枠材が1本使えんくなったんちゃ…」と、夫が夕食の時にぼやいていました
「力自慢が、柔らかいアルミの部材を木のように扱うからでしょ」
「よいよ、やれん…」
「駐車場で組み上げたら、お庭に持って入る時にブルーベリーが折れますよ」
「やっぱり、気付いちょった?」
大晦日の3時のオヤツタイムには、ビスの頭が折れたことでやる気が削げてしまったのと寒さに負けて、作ることを諦めていました
「もう無理~っ」
コーヒーを飲みながらの、終了宣言です
「どうしたの?」
「あのでかい縁台は説明書がないと組めないし…」
「捨てるには大き過ぎて、軽トラがいるわねぇ…」
「出来ても、一長一短あるんだよ」
「どんな?」
「でかすぎて、門扉が当たって開かないんだよ」
「寸法は、一間半でしょ?」
「一間半?」
「2,700」
「そうそう!ちょうど、エアコンの室外機と門扉の間」
「門扉が使えなくなると、大廻りしないと入れないのね」
「そうそう!それとね、物干し台を左右に置いたら、物干し竿の長さが足りないんだよ」
「そうよね。物干し竿は2m半くらいだもの。物干し台を縁台の上に置くか、長い物干し竿を持って来なくちゃね」
「そうなんだよぉ」
「ん?ちょっと待ってね。今、『一長一短』って言いながら『2短』を聞いた気がするけど、『1長』は?」
「ん~とねぇ、梅の剪定をする時に、脚立が要らない!」
笑いながら答えました
『一長二短』?
作りかけての縁台は、枠だけ組まれて年を越しました