点滅する思い出
60代前半  山口県
2018/06/08 13:15
点滅する思い出
気分が晴れない、雨上がりの夕方
 
「そうだ!蛍に会いに行こう!」
思い付いて、家事をパッパと片付けます


目的地は、里山の川沿いにある大きな木

いつもなら脇道に入るとすぐに、車の前を光りが横切るのですが…
今年は1匹も見えません

「あれ?どうした?」

県内の蛍の乱舞のニュースを見てから、すいぶん経っているのに?


目的の木の横に車を着けると、目の前をふわりと光が舞いました

目の高さの枝には、20匹ほどが光っています

「こんばんは!」
嬉しくなって、車を降りてご挨拶をします


暗闇に目が慣れてから下を見ると、水音を立てる黒い川面にも飛んでいます

ぼんやりと眺めているだけなのですが、ジメジメしていた気分がやんわりと晴れていきます

見上げると、星の瞬きのような光の点滅

「あぁ、なんてたくさんの…」


半世紀ほど前の夏休み

祖父母の家にお泊まりをした時に、手先の器用な祖父が蛍カゴを作ってくれました

「ここにいるよ、あそこにもいるよ!」

家の前を飛ぶ蛍を祖父に捕まえさせて、カゴをピカピカさせて持って入りました

「おばあちゃん、見て~!」

「まぁ!よぉけ捕れちょるねぇ」

「あぁ!痒い、かゆい、かゆい!」

気付くと服の上から身体中を蚊に刺されていて、ボコボコと赤く腫れ上がっています

明るい部屋で見る、手に持ったカゴの中の細長い黒い虫

「わ!気持ちわるっ!」

「それが蛍じゃあや」
祖父が笑いながら言います

「うぅ…、いらない」

蛍に罪はないのですが、優雅に点滅する光りへの感動は、痒さに負けて消え失せてしまいます

祖父にカゴを開けさせて、蛍を逃がしてもらいました

「よいよ、まったく…」
困り顔の祖父母が忘れられません


あれからずいぶんと日が経って、祖父母はとっくに鬼籍に入ってしまったけれど…

ふわふわと舞う光を思い出と一緒に眺めるのが好きで、この時期になると、雨上がりの夜は車を走らせたくなります
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コメント

60代前半  山口県

2018/06/08 17:59

2.  >>1 ふみさん
こんにちは

みんなそれぞれに、自分の特別な場所があるんですね(*^^*)

気持ちが穏やかになりますね

60代半ば  山口県

2018/06/08 16:25

1. 僕も見たことがあるので
場所は違うけど、、、妄想してます(^.^)
やすまるね~(^-^)

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