点滅する思い出
気分が晴れない、雨上がりの夕方
「そうだ!蛍に会いに行こう!」
思い付いて、家事をパッパと片付けます
目的地は、里山の川沿いにある大きな木
いつもなら脇道に入るとすぐに、車の前を光りが横切るのですが…
今年は1匹も見えません
「あれ?どうした?」
県内の蛍の乱舞のニュースを見てから、すいぶん経っているのに?
目的の木の横に車を着けると、目の前をふわりと光が舞いました
目の高さの枝には、20匹ほどが光っています
「こんばんは!」
嬉しくなって、車を降りてご挨拶をします
暗闇に目が慣れてから下を見ると、水音を立てる黒い川面にも飛んでいます
ぼんやりと眺めているだけなのですが、ジメジメしていた気分がやんわりと晴れていきます
見上げると、星の瞬きのような光の点滅
「あぁ、なんてたくさんの…」
半世紀ほど前の夏休み
祖父母の家にお泊まりをした時に、手先の器用な祖父が蛍カゴを作ってくれました
「ここにいるよ、あそこにもいるよ!」
家の前を飛ぶ蛍を祖父に捕まえさせて、カゴをピカピカさせて持って入りました
「おばあちゃん、見て~!」
「まぁ!よぉけ捕れちょるねぇ」
「あぁ!痒い、かゆい、かゆい!」
気付くと服の上から身体中を蚊に刺されていて、ボコボコと赤く腫れ上がっています
明るい部屋で見る、手に持ったカゴの中の細長い黒い虫
「わ!気持ちわるっ!」
「それが蛍じゃあや」
祖父が笑いながら言います
「うぅ…、いらない」
蛍に罪はないのですが、優雅に点滅する光りへの感動は、痒さに負けて消え失せてしまいます
祖父にカゴを開けさせて、蛍を逃がしてもらいました
「よいよ、まったく…」
困り顔の祖父母が忘れられません
あれからずいぶんと日が経って、祖父母はとっくに鬼籍に入ってしまったけれど…
ふわふわと舞う光を思い出と一緒に眺めるのが好きで、この時期になると、雨上がりの夜は車を走らせたくなります
コメント
2018/06/08 17:59
2. >>1 ふみさん
こんにちは
みんなそれぞれに、自分の特別な場所があるんですね(*^^*)
気持ちが穏やかになりますね
返コメ
2018/06/08 16:25
1. 僕も見たことがあるので
場所は違うけど、、、妄想してます(^.^)
やすまるね~(^-^)
返コメ