お酒の名前
採れた梅は、4.5kg
一晩、水に浸けました
一人で梅のヘタ取りをしていましたが、夫が携帯のゲームで遊んでいるので、手伝ってもらうことにしました
「ゲームは面白いでしょうけど、去年の10kgは全部私だけでやったんだから、今年は共同作業にしませんか?」
「あ~、はいはい」
携帯を置いて、横に立ってくれました
キッチンペーパーで水気を拭き取ってもらったので、私はヘタ取りに専念できて、今年は早く終わりました
梅ジュースを作る予定でビンを熱湯で消毒しながら、ふっとひらめいて聞いてみました
「全部、梅酒にしましょうか?」
「おっ!良いねぇ」
携帯を持ちながら乗ってきました
「それなら、ホワイトリカーを買いに行かなくちゃ」
「今から?」
座りながら聞きます
「はい、今から」と、キッパリ言いました
「はい、はい」と立ち上がりました
お酒のためなら、フットワークの良い夫です
業務スーパーで、4種類のホワイトリカーをショッピングカートに乗せました
「おっ!?」
焼酎コーナーでショッピングカートを押す夫が見つけたボトルは、『お前はもう死んでいる』と、『我が生涯に一片の悔い無し』
ケンシロウの顔と台詞、ラオウの顔と台詞が描いてある、一升瓶と720mlの芋焼酎がありました
「やらかして凹んでる部下に、あげようかな」と、ラオウのボトルを握ります
「なら、ケンシロウの方がいいね」
「なんで?」
「『ラオウの台詞は、やらかした人生を認めちゃうみたいだけど、『お前はもう死んでいる』なら生まれ変われる気がするもん」
「そうかなぁ」
「それに、ラオウよりケンシロウの方が嬉しいんじゃない?」
「それは、そうだなぁ」
「自分で払ってね」
「えぇ~?」
「サイフはもう死んでいる?」
返事は聞かずにレジに行って、夫に自分のお財布を開けさせて『死んでいる』の代金を払わせて、私はホワイトリカー代を払いました
帰宅してすぐ、梅酒作り
梅と氷砂糖を交互に入れると、夫がホワイトリカーを注ぎます
「空の容器はビンの上に置いてくださいね」
「何で?」
「その容器から、品名と原材料の箇所を切り抜いて、蓋に貼るの」
「種類が分かるように?」
「そ、そ!あ!梅酒に名前を付けようか!
『ムダな会議漬け』とか、『パワハラ上司め』とか、どう?」
「アホか」
名付けは、却下
「美味しくなぁれ」とビンを回す日々が始まりました