優しさのカケラ
郵便局での出来事
機械で入金をしていたら、隣の機械からカチャカチャと硬貨を整理する音が聞こえてきました
横を見ると、70歳代のおばあさんが困っています
操作画面が消えているのですが、後ろに並んだら同年代のおじいさんが容赦なく催促します
「画面を触ったら出来るようになるから、どこでもいいから触りなさい!」
おじいさんの後ろに3人ほど並んでいます
「それが、触っても出ないんですよ…」
おばあさんが困った声で答えています
カチャカチャと音を立てる原因は、おばあさんの前に操作していた若い男性が、ガチャガチャと大量の硬貨を入金したからです
機械が動かないのはおばあさんのせいではないのに、おじいさんは情け容赦なく、おばあさんを攻撃します
「どこでもいいから、早く押しなさい!」
おばあさんが困り果てているので、機械を操作しながら助け舟を出しました
「さっきのお兄さんが入れた硬貨を、機械が整理して詰め直しているから、終わるまではどこを触っても動きませんよ」
おばあさんが私を見ます
私は手を止めて、お隣の機械の画面を覗きました
「しばらくお待ちください」の表示を出して、まだカチャカチャと音が聞こえています
「もうしばらく、かかると思いますよ」
私がピッピッと用事を済ませて、おばあさんに声を掛けました
「終わりましたから、どうぞ」
おばあさんが私の方に寄った時に、反対側から大股でおじいさんが割り込んで、機械の前に立ちました
(え?)
おばあさんと顔を見合せました
おじいさんはおばあさんを無視して、ピッと機械を操作し始めました
(なんて人だ!)
優しさの欠片も持ち合わせていない、可哀想なおじいさんでした
おばあさんは諦めて、カチャカチャ鳴っている機械の前に戻りました