約束
テレビの位置とソファーの位置を変えて、私のエアーマットレスも動かそうと思ったので、単身赴任先から帰宅した夫に模様替えを頼みました
テレビは独りで何とかなっても、ソファーは重くて引き摺りそうなので、床にキズを付けたくなかったのです
夫に現状説明をして、考えている配置を説明しました
夫の答えは決まっています
「ええよ。明日、やろう」
彼はいつも、する気がなくても安請け合いします
今回は、うっかり信じてしまいました
夫の指定席は、テレビの前のマッサージチェアです
約束などすっかり忘れ去って、テレビのゴルフ番組を見ながら飲む缶ビール1本で酔っ払って、何分もしないうちに寝落ちします
面白いくらいに、いつも、どういう状況でも、テレビのリモコンは手離しません
諦めの悪い私は、音を消した携帯でゲームで時間潰しをしながら、夫が起きるのを待ちました
15時過ぎにパッと目覚めた彼が、あたふたと動き始めます
携帯ゲーム中の私の前に旅行鞄を握って立って、猫なで声を出します
「帰りの新幹線に乗るからぁ、駅まで乗せていってもらえますぅ?」
「今から?!」
「うん!」
「早めに言ってもらわないと、私にも予定があるんですけど」
「だからぁ、今、言ったよ?」
「遅すぎませんか?」
「大丈夫だよ、まだ15分あるから!」
私が言いたいのは、電車の時刻のことじゃないんですけど、慌てている彼の耳には入らないようです
先に靴を履きながら、身振りで私を急かします
彼のお気楽な脳は、模様替えを頼まれたことを完全に消去してしまったようです
模様替えのことは言わずに、駅まで乗せていきました