食通の人
新山口駅のお土産店でのことです
「○○さんから、『鯨が食べたい』って言われたんだよ」
業者さんへの手土産で舌鼓を買っている時に、夫がぽつりと言いました
「ミンク鯨の尾の身かな?」
「そうそう、それ!尾の身って言ってた」
「フグよりお高い物をねだられたのね」
「ここに、あるかなぁ」
「ないんじゃない?。唐戸市場で冷蔵品を探して、なければ冷凍品を贈ればいいじゃん」
私が話してる途中からどんどん離れて、店内を見回っています
いつも、そう
私の話を、最後まで聞いていません
(部下には「人の話をちゃんと聞きなさい!」って、言ってるんじゃないの?)
異動が決まった時から、もう19箱の舌鼓を配っています
「みんな『美味しい』って驚いて、翌日にお礼の電話をしてくるよ」
「山口なら『豆子郎』だと思ってるんでしょ?」
『そうそう!』
おだてられて気を良くして、お高い和菓子を配って回る夫です
追加の2箱を買いました
舌鼓を20箱以上の4万円を超える臨時出費は、お財布にかなりの痛手ですが言いません
舌鼓のお支払いを済ませた私の所に、戻ってきた夫が残念そうに言います
「これしかないね」
いろいろな部位の少量ずつの、詰合せの鯨の冷凍品が置いてある陳列台を指差しますが、尾の身は入っていません
「尾の身って言うのは、食通な人よ」
『尾の身』のお値段が、夫にわかっているとは思えません
「この『さえずり』も、ウケるとは思うけどね」
「尾の身だよ」
「はい、そうでした。今度、唐戸市場き行きましょう」
そう言って舌鼓を持たせて、改札に向かいました
(本当に唐戸市場にあるのかを、確認した方がいいよね)
夫を見送って、帰りながら心配になります
尾の身って簡単に言うけど、小さい塊がお高いのよ?
岡山県人は、山口ならどこでも鯨を売ってると思ってるのかしら
心とお財布が縮み上がるような、大胆なお願いをする食通の人がいました