食通の人
60代前半  山口県
2020/01/25 10:37
食通の人
新山口駅のお土産店でのことです
 

「○○さんから、『鯨が食べたい』って言われたんだよ」
 
業者さんへの手土産で舌鼓を買っている時に、夫がぽつりと言いました

「ミンク鯨の尾の身かな?」

「そうそう、それ!尾の身って言ってた」

「フグよりお高い物をねだられたのね」

「ここに、あるかなぁ」

「ないんじゃない?。唐戸市場で冷蔵品を探して、なければ冷凍品を贈ればいいじゃん」

私が話してる途中からどんどん離れて、店内を見回っています

いつも、そう

私の話を、最後まで聞いていません

(部下には「人の話をちゃんと聞きなさい!」って、言ってるんじゃないの?)


異動が決まった時から、もう19箱の舌鼓を配っています

「みんな『美味しい』って驚いて、翌日にお礼の電話をしてくるよ」

「山口なら『豆子郎』だと思ってるんでしょ?」

『そうそう!』

おだてられて気を良くして、お高い和菓子を配って回る夫です

追加の2箱を買いました

舌鼓を20箱以上の4万円を超える臨時出費は、お財布にかなりの痛手ですが言いません


舌鼓のお支払いを済ませた私の所に、戻ってきた夫が残念そうに言います

「これしかないね」

いろいろな部位の少量ずつの、詰合せの鯨の冷凍品が置いてある陳列台を指差しますが、尾の身は入っていません

「尾の身って言うのは、食通な人よ」

『尾の身』のお値段が、夫にわかっているとは思えません

「この『さえずり』も、ウケるとは思うけどね」

「尾の身だよ」

「はい、そうでした。今度、唐戸市場き行きましょう」

そう言って舌鼓を持たせて、改札に向かいました


(本当に唐戸市場にあるのかを、確認した方がいいよね)

夫を見送って、帰りながら心配になります

尾の身って簡単に言うけど、小さい塊がお高いのよ?

岡山県人は、山口ならどこでも鯨を売ってると思ってるのかしら


心とお財布が縮み上がるような、大胆なお願いをする食通の人がいました
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