粘り強い二人
お買い物を済ませて、駐車場に戻りました
出口には、精算機に駐車券を差し込んでいる車がいました
もう1台がゆっくり進んで、後ろに並ぼうとしています
(無料時間が過ぎちゃったかな?)
車に乗って、駐車券の時刻を確認します
無料の時間は、2分後までです
(やった!間に合うじゃん!)
3台目に並びましたが、先頭車が動く気配がありません
(あれ?)
先頭車か精算機に差し込んだ駐車券を、精算機がペロンと吐き出しています
出てきた駐車券を、また差し込んでいます
その動作が、延々と繰り返されているのです
(わっ!もう間に合わないじゃん!)
後ろに車がいなかったので、精算機の近くの駐車スペースに車を動かしました
駐車料金を倹約するために、店内に小走りで戻ります
チラッと見ると、先頭車はご高齢の男性でした
すごい勢いでお店に突進してくる私を見て、店員さんが怪訝な顔をします
「さっきのお買い物で、無料駐車券を貰えますか?」
息がきれてハァハァしながら、店員さんにお願いします
「走って来ちゃったんです?差し上げますから、お待ちくださいね」
「おじいちゃんの車の精算がなかなか終わらなくて、並んでる間に無料の時間が終わっちゃいました」
ハンコを押された1時間無料券を受け取って、歩いて駐車場に戻ります
(さすがに、もう行っちゃったよね?)
出口を見ると、まだおじいちゃんの車がいます
(まだいるよ!)
ペロンと出てくる駐車券を、懲りもせずに精算機に差し込んでいます
機械は無機質に突き返すだけで、融通を効かせて正しい精算方法を教えてはくれません
ご老人の様子を見に行こうと、精算機に向かって歩き始めた時です
後ろに並んでいた車から男性運転手が降りて、何か話をするわけでもなく、おじいちゃんの手から駐車券を取って精算機に突っ込みました
バーがサクッと上がりました
(えっ?)
運転手が背を向けて車に戻る間に、ご老人の車は発進しました
意外とあっさり片付きました
私が車を動かし始める頃には、精算機周りにはもう誰もいません
先頭車のご老人は、どうして車を降りて助けを求めなかったのかしら
意地?それともプライド?
先頭車のご老人の根気強さと、2台目の運転手の我慢強さに驚きました