17歳の奮闘
「あの男の人が、来なかったらいいのに!」と、アルバイトでくたくたな女の子が、愚痴っていました
勤め始めたころは、くたくたになっても毎日が楽しくて楽しくて、その日の出来事を明るい表情で伝えてくれていました
1か月ほど前から、元気がなくなりました
「ウチにだけ、言い方がひどい男の人がおるん…」
「なにか、行き違いがあるんじゃない?」と、聞きました
「ウチは店長に言われた仕事をしとるのに、違うことをいろいろ大声で命令してくるん…」
「社員さん?」
「いいや、同じアルバイトの人。店長に言われたことして、その人に文句言われる意味がわからん…」
言いながら、だんだん涙声になります
「お休みしたい…」
「職場では『好き』とか『嫌い』とか『気が合う』とか『気が合わない』とかの感情は必要ないの。しなければいけないことを、するだけよ。お仕事してる時に何か言われたら『今は店長に言われたことを先にします』って言いなさい」
「はい…」
「今日は話し掛けられても無視した!」
と、ぶっきらぼうに言う日もありました
「誰にでも同じ態度でいなさい。顔を見てお返事をしなさい!周りの人の気分が悪くなりますよ。職場の雰囲気を、あなたが壊してはいけません!」
店長さんに相談するように、助言しました
この子には軽い知的な障害があって、『空気を読むこと』ができません
そつなく対応できることもあるので、彼女は少し変わった天然な子にしか見えません
彼女はいつも、何かが起こる都度私に相談に来ます
そして、後付けで学習することになります
状況と相手の思いを説明すると、次は言われたことを実行します
毎日私に叱られて、そのたびに反省して、また苦手な人に立ち向かっていました
諦めたのか慣れたのか、少しずつ明るい表情が戻ってきました
昨日、興奮して報告にきました
「今日はね!『ごめんけど、これやって』って、優しい声で言われたよ!」
「それで、どうしたの?」
「『はい。わかりました』って、顔見て言った!」
「頑張ったわね~!ご褒美にランチする?」
ぎゅっと、肩をハグしました
「ランチ行く~!」
嬉しそうでした
誰もみんな、一生懸命にお仕事をしています
言葉足らずや勘違いで気持ちがすれ違うと、雰囲気が悪くなります
相手の男性は、この女の子に知的な障害があることに気づいたのでしょうか
それとも、店長さんからお話を聞かれたのでしょうか
相手も少しずつ、変わってくれていました
年下の女の子に、自分から折れて相手に合わせて変わることは、葛藤があったと思います
会ったことのない男性に、感謝しました