「中国は、どうだった？楽しかった？」　
みんなに聞かれます
　
「楽しかったけど、くたくたした」
と、答えています


行く準備中のこと…
どこを探しても、私の空気枕がありません

「ここに置いてたのに…。知らない？」と、夫に聞きます
「知らないよ」
「ないのよ～」
「俺のは、ほら、入れたよ」
夫の手にはピンク色の私の枕が、ぐにっと握られています

「それ、ピンクだから私の。あなたのはブルーだったでしょ？」
「え？！俺のがない！俺のは？」
「前のゴルフ旅行の時に、どこに片付けました？」
「え？そんなの覚えてないよ～」

棚ではなくて、いくつもの手提げかばんに手を突っ込みめました
「あった！」
「枕はトランクじゃなくて、手荷物袋に入れてくださいね」


この調子で、中国の道中もずっと、様々な場面でボケ続けました
「ご主人、楽しい人ね」
お陰で、ツアーの皆さんやガイドさんに、気に入られました


最後の仕上げは、帰りの飛行機

機内食が配られ始めました
「ポーク、オア、フィッシュ？」と、前方の席から聞こえてきます

「お食事は、豚肉とお肉とどっちがいいかって、聞かれてますけど？」
夫に聞きました

「え？！オレンジジュースは、ないの？！」

「それは、サービスドリンクでしょ。お食事は、ポークとフィッシュと、どちらがいいですか？」

「オレンジジュースは、ないのか…。ポーク」

「私はお魚で、夫には豚肉をお願いします」
ＣＡさんにお願いしました

数分後のドリンク担当のＣＡさんに、オレンジジュースをお願いしました


「アフタードリンクは、コーヒーでいいですか？」
お食事の後で、夫に聞きました

「これは何？」
夫が持っているのは、シール容器に入ったお水です

「お水」
「どうして、お水があるの？」
「お薬を飲む人が助かるからかしら？」
「そんなわけない」

唐突に、言いました
「コーヒー」

あ、思い出したのね…
間に合ったので、コーヒーを２つお願いしました


飛行機を降りる時に、パスポートを私に渡そうとするので、手荷物の確認が終わるまでの間は、自分で持っているように言いました

トランクを受け取って、ツアーの皆さんにお別れをして、手荷物申告場所に着いた時です

「パスポート、ちょうだい」
「え？」
「俺のパスポート！」
「は？ショルダーバッグに入っていないの？落としたんですか？」
「え？俺が持ってるの？」
ショルダーバッグに、手を突っ込みました

「俺が持ってたのかぁ」
角が折れ曲がって、少し広がったのが出てきました
「あ～ぁ、今度、カバーを買います」


パスポート生活から解放される建物を出た所に、駐車場に向かう送迎バスが待っています


日常に引き戻されるバスに、乗りました