「おばちゃん家に引っ越しする時に、親父が俺の集めてた物を捨てました」
残念そうに、居候君が言いました

キレイなガラス瓶を、集めていたそうです

「人が集めている物は、興味のない人にはゴミにしか見えないものだから…。仕方ないよね」



私が集めていたのは、グリコのおまけ

小学生のころ、おやつ代を50円もらえた日に買うのは、いつものお決まりのグリコと紅玉

他の物を手に取るのに、悩んで悩んで…
やっぱり、グリコと紅玉

これで、ちょうど50円でした


おまけの箱を開ける時の、わくわくする気持ち

同じ物が出ても、対になったようで嬉しくて、がっかり感はありませんでした

小さいけど、精巧にできた物ばかりでした

集めたおまけは、分野ごとに小分けしてビニール袋に入れて、それをまた大きめのビニール袋に入れて…
パンパンに入っていました


山口にお引っ越しをすることになって、大切な物を段ボールに詰めました

自分が持って行く物は、中ぐらいの段ボール１個に入れます

バービーは買ってもらえなくて、ジェニーという少しふっくらした人形を買ってもらったので、それと着替えと家具を入れました

グリコのおまけの袋を探しました
どこにもありません

別の箱に、入れてもらえるはずもありません

ない、ない、ない…
とりあえず、他の大切な物を入れました

長く探し回る時間もないくらい大忙しで、お台所などの荷物や洋服を、幾つもの箱に詰めなくてはなりませんでした

要らない物や箱に入らない物は、焼却炉に運びます

焼却炉のゴミ置き場
たくさんのゴミに混ざって、私のグリコの袋が見えました

「どうして、ここにあるの？」
思わず、大声が出ました

「そんな物は使えもせん！いらんじゃろ！」
後ろに立っていた、母が言いました

握っていたゴミを置いて、鳴き声を殺して歩いて戻りました

ゴミにしか見えない、私の宝物…
ベランダから見える焼却炉の煙に、心の中で詫びました



居候君が集めたガラス瓶達は、陽に当たるとキラキラ輝いてきれいで、眺めていても飽きなかったでしょうね

「残念だったね。居候君の気持ち、少しわかるよ。同じような経験があるから…」

「また集めるから、いいです」
薄く笑顔を作って、居候君が言いました


お互いに、親には恵まれなかったようです