少し席を外して戻ると、みんながわいわいと盛り上がっています
　
どうしたのかと思ったら、うちの犬のビスケットを、居候君が勧められていました

「オレはやだ！犬のだぞ！絶対に食わない」

「甘さ控えめで美味しいから、半分でいいから食べてみてくださいって～」
ビスケットの袋を持つ男子の太ももの上に、家の犬が顎を乗せて、おやつをねだっています

別の女子も、ノリノリで勧めます
「ここにいるみんなが、食べてるんだから！○○君も△△君も食べて、美味しいって言ったんだから！大丈夫よ！」

私が犬に新しいお菓子を買ってくると、みんながそれを摘まんで味をみます

同じことを、居候君にさせようとしているのです

「やだ！犬のだぞ？！」
断り続ける彼の手に、ビスケットが渡されます

「半分に割って見せたら、ワンコは小さい方を取るから、やってみて」

しぶしぶ、居候君が割ります
パチン！
「はい、どうぞ～」

犬は、小さい方を食べました
「ほんとだ！」

「残りは、食べてくださいね」
「オレが？！」
「美味しいんですって！」
罠に掛かりました

「もう～！」
パクンッと、食べました

慌てたのは、家の犬です
ほんとは手の中にあると信じて、彼の手の匂いを嗅いで探し回ります

「１つ、あげてね」
私がお願いすると、居候君がモグモグしながら頷きました

飲み込んでからの、第一声
「粉っぽいなぁ」

「でも、ダイエットクッキーみたいで、美味しかったでしょ？」

「知らねぇよ！ダイエットクッキーとか食ったことねぇし」

女子が、ビスケットを食べながら言います
「ジャーキーは、さすがに食べようとは思わないわ～

勧めていた男子が言います
「○○君は、食べたっす」

今度は、その男子が勧められ始めました
「いやいや、ジャーキーは、無理って～」

あんまり囃し立てられるので、パクンッと食べました
「うわっ！めっちゃ甘い！」

「へぇ～！甘いんだ～」
みんなが、少しずつ食べさせられました

「うぅわ！これ、飲み込めん～」
「ヤバい～！お茶をください～！」

足元では、みんながおやつを食べるので、犬が大慌てです
『僕にも！』
みんなの間を、うろうろします

「ちゃんと、うちの子にもあげてね」
「はい！どうぞ～！」
犬が美味しそうに、ジャーキーを食べます

やっと飲み込んだ男子が、それを見ながら呟きました
「敵わんわぁ」

「敵うわけないやろ」
みんなが笑います

次にみんなが目を付けたのは、干し芋です
うちの犬の、大好きなお菓子です

「おばちゃん、これもいい？」

「ダメって言っても、食べないと納得しないんでしょ」

居候君が食べました
「うまっ！」

みんなが口に入れます
「ほんと！１番美味しい！」
みんなの声が、明るくなりました

私がお願いする前に、気付いた居候君が気付きました

「お座り！」
犬にも１本与えます

食べているみんなに言います
「昔は、これは人のおやつだったんですって」

「そうなん？」
「美味しいから、もう１本、いい？」

「もうダメ！ワンコが悲しむからダメ！」

犬のおやつの試食会は、干し芋が１番の好評でした


「そう言えば、さつま芋をたくさんもらったから、明日は大学芋を作りましょうか？」

みんなが口々に、「食べたい～！」と言います


賑やかな試食会でした