コメントに凝る
居候君が来て半年
怪我をしたり病気になったり、給料日の10日も前から無一文になったりするので、その度に病院に連れて行ったり、食事を作って食べさせたりする
日々の居候君に振り回されるが、彼の家族は私に預けて「何から何まで、よろしゅうお頼み申します」と言うだけで傍観している
かわいそうな子ではあるけど、かわいそうとばかりも言っていられない
ぐだぐだな生活を改めないので、お2階の居候部屋にゴキブリが歩いていた
アパートから撤収してきた、彼の荷物の中で育っているらしい
「部屋で繁殖を試みているこゴキブリは、ペット?」と聞くと、違うと言ってスプレーを振り掛けて抹殺していた
それでも、食べ終えたお菓子の袋は放置されたままだし、お薬を出した脱け殻が散乱している
その都度、彼に言っても『寝て起きると忘れ去る』特技にやられる
根負けしたので、今どきのアイテムを有効活用することにした
現状の写メを送って、コメントを入れる
今日の写メは3枚
脱衣場に日曜から放置してある、チョコレートの袋を写メには『1階にゴキブリを呼ぶ儀式ですか?』
流し台の中のご飯粒の写メを送って、『ここでゴキブリを餌付けするんですか?』
冷蔵庫の中の置場所は半分ずつと決めてあるけど、ほとんどの棚に所狭しと置かれている惣菜のパックの写メには『私の場所は、ソーセージ1本分の幅』
数日前、ほぼ毎日のように隙間を開けて閉めてある浴槽のフタの写メを撮って『きちんと閉めないと湯気が抜けてお湯が早く冷めます』とコメントを書いた最初の写メは、既読無視された
遊びに来た彼の同級生達に、話を盛ってチクる
「『いちいち、うるせぇ!クソババァ!気付いたら、お前がしろいや!』って、思ってるに違いないね」
「そうやろね~!」
「世話になっとるのに、おばちゃんを無視るなんて、いい度胸してるやん」
みんなが話に乗ってくる
居候君は、「後で返事しようと思って忘れたんだってば!無視とか、そんなつもりはないんだってば!」と、必死に言い訳をしていた
謝罪がないので、言ってみた
「今度から、Twitterにしようか?」
誉めれば調子に乗り、叱れば心が折れると言う
心に余裕(ゆとり)がなくて、周りを思いやれない
20歳になろうかとする若者は、『面倒臭いから後回しにしたら、誰かがやってくれる』人生を生きたいらしい
かわいそうだけど、甘やかさない