大人の恋愛と云うけれど vol.26
50代前半  大阪府
2022/12/20 22:21
大人の恋愛と云うけれど vol.26
トオルとの激しい性愛に疲れた身体を引き摺るようにして、バスルームからトオルの居る部屋に戻ったあきの顔を見て、トオルはすまなそうな表情を浮かべながら、あきに詫びの言葉をかけた。
「大丈夫? あんな風に君を抱くなんて自分本位過ぎてしまったよね? 本当にすまなかった。申し訳ない。」
トオルのその言葉を受けても、あきの心には何も響いては来なかった。
ただ、トオルが再度詫びの言葉を言っているので
とりあえず何か言わなければと思い、あきは必死に言葉を探していた。

「そうね・・・。あんな風に思いのままにするのは大人の男性のすることじゃないと思うわ。次からはあんな風にしないって誓ってくれる? そうじゃないと、もう貴方とは会わないわ。エゴイストは嫌いなの。」

「もう、あんなやり方はしないよ。誓うよ。」
私と会えなくなってしまうのが惜しいのだろうか?
トオルは、焦ったように私の言葉に反応して、誓うと言っている。

今夜の性愛で、トオルと会うのは最後にしようとさえ思っていたあきだったが、あと一回だけトオルのやり方を見てから今後のことを考えてみてもいいかと、思い直していた。

「わかったわ。貴方がそこまで言うなら、今夜は貴方の言葉を信じるわ。」
あきは、聞こえるか聞こえないかというくらいの小さな声で、そう言うと急ぎ気味に帰り支度を始めた。
時間がない訳ではなかったが、あんな風に男性の思いのままに抱かれたこの場所から、一刻も早く立ち去りたかったのだ。

あきが急いで帰り支度を始めたので、トオルもあきに合わせて帰り支度を始めた。
トオルが腕時計をはめて鞄を手にしたのを見届けたあきは、足早にドアの前まで行き、勢いよくドアを開けて部屋から出た。ホテルの支払いはトオルが済ませていたようで、あきに続いてトオルも部屋から出た。

ホテルの廊下を無言で歩き、エントランスを抜けて出口に着いた時、トオルがあきの背中に向かって言った。
「また、会えるよね? これが最後なんて事はないよね?」

すがるようなトオルの言葉に振り向きもせず、たった一言 「また連絡するわ。じゃあ。」とだけ告げて
トオルの顔も見ずに、ホテルを後にして帰途についたあきだった。

「私がトオルを抱く」そういう関係にしないと
トオルに遊ばれて、都合のいい女になってしまうのだ。 それだけは嫌だ。それだけは避けなければ
女が廃る。 帰る道すがら、そのことだけを考えているあきだった。
コメントする

…━…━…━…

無料会員登録はコチラ

…━…━…━…