子供の頃


母親の作るご飯が大好きだった。


今 考えると レンジもトースターもなく ガスも一口しかない台所で おまけに自営業で菓子屋を営みながら よく食事を毎食作ってくれたと思う。



田舎育ちのせいか 洋風の物はあまりなかったが 私が食べ物を好き嫌いなく 食べれるようになったのも 彼女のおかげだ。



今の時代よりは中食が盛んではなかったが 少なくとも出前や出来合いのお惣菜が並ぶ事は一度もなかった。



多分 父親がそういう献立を嫌っていたのではないかと 思うが それでも たまには 休みたい時 楽をしたい時はあったと思う。


小さい時は 大人になれば 誰でも自然に料理や裁縫が身につくと思っていた。



それこそ サザエさんのお母さんのフネさんみたいに。



お節や クリスマスに ケーキやお団子。


イベントに応じた料理がきちんと出来ると思っていた。



ところが 実際は違った。



自分が 結婚して子供を持っていい年齢になっても そんな器用に作れなかった。



今は 料理に関する情報が 溢れているので 作る気さえあれば 調べて それなりに作る事は出来る。



おまけに お金さえ出せば 色とりどりの美味しいお惣菜は沢山ある。



身近な例えで 母親が第一子の姉を産んだ年齢に いざ自分がなってみても 自分以外に責任が必要になる“子供”を持つ覚悟も力もない。



自分は今まで何をしてきたんだろうなぁ………と 感じてしまう。



自分なりに 勉強や仕事・遊びに 費やしてきたけれど それって たいした事じゃないのかしら。



自分の“ガンバリ”って なんだっけ？


めちゃくちゃ 裕福に育ったわけじゃないから 人並みに そこそこ苦労もした気がするけど 自分を成長させるには まだまだ なのかしら。



半世紀近く生きて あと平均寿命まで30年もあるのに なんか もうスタミナ切れ


身体もあちこち メンテナンスが必要で あとそんなに保つかしら？


子供もおらず 老後生活の保障もないのに 貯金もなかなか出来ない薄給。


こんな 毎日で 大丈夫かしら。



シトシトと 小気味よく雨が降る こんな日は そんな事を ぼんやり思ってしまう