毎年この時期になると思い出す、あの日の出来事‥
まだ私がうら若き乙女だった頃の話。

18歳の頃の2月のとある日。
私は彼と道端で大喧嘩をしていた。

まだ若くて活気盛んな頃。
ケンカの原因が何だったのか、今では思い出せないけど‥

とにかく口論がヒートアップしてしまい
泣きながら彼と喧嘩して

「もういい、1人で歩いて帰る」

と捨て台詞して彼の元から走り去った私。

夜の10時が近かったと思う。
街灯もなく真っ暗な人気のない道を独りで
トボトボ歩いた。

悲しくて悲しくて
涙をこぼしながら、本当にトボトボと
亀のようにゆっくり歩いていた。
心のどこかで、彼が追い掛けて来てくれるのを期待しながら‥‥



すると突然、
後ろからぎゅーって抱きしめられた。

彼が追い掛けて来てくれた！
嬉しい
って思った私は、後ろから回された腕を
しっかりと握り、黙ってその場で立ち尽くして
後ろ抱きの余韻に浸った。

しかし、何か変だ。
後ろから回された腕がジタバタし始める。

私がぎゅーってしがみついてるのを振り解くように‥‥


？？？

私は掴んだ腕を緩め
彼の方に向き直り、正面から抱きしめた。


「来てくれたんだね、嬉しい️」
って言って彼を抱きしめた瞬間‥


激しくドンっっっと突き飛ばされた。

尻もちをついて唖然とする私の目に写ったのは、黒いロングコートを着た男。
黒いサングラスをかけている。


黒いコートの男は猛然と走り去って行った。
駆け出して行く後ろ姿を地べたから呆然と見ていたら、ヒラヒラと揺れる黒いコートの下はどうやら『全裸』。


えっ？？
何が起こってるのかよく分からない。
あの男は誰だ？？？



ゆっくり状況を整理して考えると‥


アイツ痴漢じゃーーーん((((；ﾟДﾟ)))))))


そう言えば、後ろから抱きしめた手は
私のオッパイを掴んでいた


暗い夜道で痴漢しようと近づいて
後ろからオッパイ掴んだら、
予想外に勘違いオンナに抱きしめられてしまい、痴漢も慌てたのだろう。


『キャーーーー！！（叫）』
ってのを想定してたんだろうけど

あろう事か、オンナに腕を掴まれ抱きしめられ、くるりと向き直して『嬉しい️』とか言われて
更に抱きしめられ離して貰えない。


完全、想定外の展開にひるんだのか、
私を突き飛ばして走り去った痴漢。


黒いコートの下は全裸の男。
予定では、オッパイを掴んだ後に
『目に物を見せてやる』予定だったろう。

ホラッ️
ってモノを見せつけて、きゃーって言わせる予定が台無しに。


異変に気付いた私は、すぐさま彼に電話を掛けて聞いてみた。

『今、どこにおるん？さっき私の後を追い掛けて来て‥ないよね』

と。

独りで帰るって言ったから、俺ももう家に帰ったよ。との返事。


やはりあの男は痴漢だったのね。


痴漢に遭ったと思ってなかったから、
全く怖いとか思わなかった。
というか、むしろ彼が追い掛けて来てくれたと勘違いしてたから、喜んですらいた私。


真相を知って、
なんてマヌケなんだ私‥。

と思い知った、2月の寒い冬の夜の思い出。