自己満足な話
客が1人のコンサート
それは俺が大事な人にだけすること
父方の祖父母は死に目にはあえなかった。会った時には、意識がなかった。それは、自分の中で後悔を度々うみだしていた。
今、母方の祖父が末期ガンで入院中だ。食事は通らず、歩くことももままならない。
小さい頃相撲をとってもビクともしなかった祖父。
ワンマン社長で、グロリアを乗り回していた強くてカッコいい祖父。
頑固さだけは変わらないけど、体の窶れは明白で、肌の色は紫、体はガリガリ。
そんな姿を見て泣けてきた。
そんなある日、母親にこう言われた。
「病院でボランティアでコンサートしたらいいんじゃない?」
俺の答えは聞くまでもなかった。
病院から許可をとり、たった1週間で開催に至った。
その日はバタバタしていて、楽譜忘れるわ背広忘れるわ(ユニクロでセーター購入)練習不足だわと落ち着かなかった。
最初、祖父の部屋に挨拶にいった。祖父は行かないと首を横にふった。そのあと微かに、けど確かに首を縦にふった。午前中から看護婦に言ってたくらい楽しみだったらしい。そんな素直じゃないとこが、いかにも祖父らしい。
ベッドごとフロアに移動して、いよいよ演奏会は始まる。不思議と、涙はないし、ただ目の前の音楽に集中していた。練習は明らかに不足していたが、心のそこから、赤い燃えたぎるマグマのようなエネルギーが生まれる。それを信じて、ただがむしゃらに。
一曲目は「G戦場のアリア」
いつともわからない迎え。その時、俺はこの曲を聞いてほしい。穏やかな気持ちできっと良い人生だったって思えるから。
曲の説明をいれる。
二曲目は「愛の挨拶」
祖母とは決定的になかが悪い祖父。いい加減素直になれよって、思ってる。
三曲目は「トルコ行進曲」
祖父が元気だった時、この曲を聞いて誉めてくれた。そんな話をすると、祖父は大きく頷いていた。
おじいちゃんは、よっぱらうとこの歌を歌ってたね。
四曲目「昴」
五曲目「乾杯」
言わなかったけど、もし俺が結婚できたら、おじいちゃんに結婚式で歌ってほしい。けど、それは難しくなっちゃったね。俺、結婚できたら式の時に必ず思い出すからね。
たまたまなぜか来てた親戚が、号泣しちゃって。「おいおい、まだ生きてるから!勘弁してよって。」そう思った。
最後はノクターン。あまり上手くはないかもしれないけど、俺の中で今一番大事な曲。
時間は、あっという間だった。おじいちゃんは、演奏中号泣したり、リズムとったり、メロディ歌ってたらしい。俺からは見えなかったけど。
演奏が終わってしばらくして、おじいちゃんの部屋に行った。おじいちゃんは、目をカッと開けていて、ベッドの角度をあげてた。あれだけ目が開いてるのは入院してから見てなくて、超びびった。真意はわからないけど、おじいちゃんなりのお礼だったのかなって思う。
震災日の翌日、人に喜んでもらえるコンサートができたのかな。
今後もボランティアにいくかもしれないけど、最後の曲は「昴」。そうやって、できの悪い初孫だけど、曾孫は見せられそうにないけど、繋がっていたい。自分の中で伝えきった。それでも、できるところまで。
じいちゃん、長生きしてな。
コメント
2014/03/20 14:52
3. お爺さん、うれしかったでしょうね。(^O^)
あなたのピアノが聞けて。
返コメ
2014/03/19 16:14
2.
素晴らしいコンサートだね
天ちゃんの気持ちがお祖父様にも皆様にも伝わるよ
凄く素敵 感動しちゃう
返コメ
2014/03/19 1:13
1. 長生きすることを祈ってます
でも居なくなる覚悟も持ちたいですね
私の祖父は何も言えない内に亡くなったので
こんなこと言う必要無いでしょうけど
気を悪くさせたらごめんなさい
返コメ