おどろかさること


昔男ありけり｡男仕事に遅れじとて道すがらこんびににて握り飯を二つばかりなむもとむる｡
いざ夕餉にせむとて､車に乗りしのちに開けるもいずこかあやしかりける｡不思議がりてよくよく見るに､二つのうちのかたわれ､その中ほど具があらましけるあたりに米も具もあらざりける｡
男おどろけるも車すでに動き出しけるによりて､戻ること能わず｡男泣く泣く具なしの握り飯を食らふ｡

悲しさのあまり詠める

道すがら
ふぁみまおにぎり
夕飯に
もとめし筈が
そのおにぎりは


車は座席がほぼ埋まりけるも､通路は心なし人少なし｡四人にて向かひあひて座る座席に､年の頃１５､６ばかりなむ､女学生のようたるいと美しき娘ありけり｡
男下心湧き出で､娘のそばに立ちて握り飯を食らふも､娘鞄の中で何やらあやしかりける動きとりける｡
不思議に思ひてそっと覗きけるに､本の装丁をば剥がし､逆しらになむかけける｡

さては恥ずかしき本をぞ読まんとて男ますます覗きけるが､その本初稿より美しき女性があらわにて契りける本なりける｡
娘濡れ場に於ひても読み飛ばすことなく､粛々と読みふけりける｡さては名に聞こえしれでぃこみならんかと男思ひしが､その本あまりにも激しひ描写にて､所謂ｴﾛ本なるめりやとおどろかさるる｡

おどろきによりて詠める

込み合ひし
電車の中で
じぇいけいが
開きし書物
その内容は

あまりにも過激な描写を読みふける娘に男ますます下心湧き出で､声をかけむべきか否かおもひ悩む｡
されど､娘男が悩みけるうちに館腰にて車を降りけり｡

男一人立ち尽くしけるのみ｡

(訳)
おどろかされたこと

昔男がいた｡男はﾊﾞｲﾄに遅れまいとして帰り道にｺﾝﾋﾞﾆでおにぎりを二つほど買った｡
さあ夕飯にしようと電車に乗ってから封を開けたが､どこかおかしい｡不思議に思ってよく見てみると､二つのうちの片方の真ん中あたり､具があるであろうあたりに米も具もなかった｡
男は驚いたが電車がすでに動き出してしまっていたために(返品に)戻ることができなかった｡男は泣きながら具なしのおにぎりを食べた｡

悲しさのあまり一句詠んだ

道すがら
ふぁみまお握り
夕飯に
もとめし筈が
そのおにぎりは

(帰り道にﾌｧﾐﾏでおにぎりを夕飯に買い求めた｡しかし悲しいことにそのおにぎりは(具が入っていなかった))

電車は座席はほぼ埋まっていたが通路は比較的空いていた｡四人がけで向かい合って座る座席に､１５､６歳ぐらいの女子高生らしきとても美しい女の子が座っていた｡
男は下心が芽生えてその女の子のそばで(残りの)おにぎりを食べていたが､女の子が鞄の中で何やら怪しげな動きを取っていた｡
不思議に思ってそっと覗き込んだところ､本のｶﾊﾞｰを剥がし､裏返してかけ直していた｡
さては恥ずかしい本を読んでいるなと思って男はますます覗き込んだが､その本は一ﾍﾟｰｼﾞ目からきれいな女性が全裸で性行為に及んでいる本であった｡
女の子は濡れ場でも読み飛ばすことなく､粛々と読みふけっていた｡さてはこれが有名なﾚﾃﾞｨｺﾐかと男は思ったが､その本はあまりにも描写が激しいので所謂ｴﾛ本ではないかと驚かされた｡

驚いて一句詠んだ

込み合いし
電車の中で
じぇいけいが
開きし書物
その内容は

(込み合った電車の中でＪＫが本を開いて読んでいた｡しかしその内容は(とんでもないものだったよ(笑)))


あまりにも過激な描写を読みふける女の子に男はますます下心が芽生えて､声をかけようかどうか思い悩んだ｡
しかし男が悩んでいるうちに女の子は館腰駅で電車を降りてしまった｡

男は一人立ち尽くすしかなかった･･･