セリフイケメン
40代前半  大阪府
2017/02/07 11:35
セリフイケメン
「セリフイケメン」をご存知だろうか。

まず前提として、ここでいうイケメンというワードに容姿は関係ない。
いや、関係あるとすれば容姿は悪ければ悪いほどセリフイケメンの素質は高いと言われている。

時としてセリフイケメンは加害者となる。
「え?ちょっと・・・
これ、どう処理したら良い??」
といった感じに周囲に戸惑いを生じさせるという悪魔の所業。

「私の彼はイケメンだから関係ないわ」
と安心しているあなた!

要注意ですよ。

イケメンの中にもごく稀にセリフイケメンは潜んでいるんです。
彼らは絶滅危惧種として保護する必要があるのでは無いか、と僕は睨んでいる。


あなた「ところでセリフイケメンって何?」

いい質問ですねぇ~

発言の中に「いやそれ、お前が言う?」と思わずにはいられないセンテンスと、その中に「何か受け入れ難い気持ち悪さ」を有する空気の読めないナイスガイ

分かりやすく言うと
ドラマのイケメン役みたいなセリフを場の空気を読まずにサラッと言うやつ

これがセリフイケメンだ。

タモリさんがテレビで言っていた。
「名言は好きだけど、名言を言おうとする奴は嫌いだ。」
この気持ちは分からなくもない。

ただ一応言っておく。
僕はセリフイケメンなる人種が嫌いではない。

いや、言い換えよう

僕はセリフイケメンが大好物である

・・・いや、だってさ面白くない?
あのわずかなピントのズレかた。

土砂降りの雨の中、胸ぐらを掴んで
「おっ、お前なぁ!
彼女が・・・
・・・彼女がどんな気持ちでいるか・・
考えたことがあるのかーーーっ!!」

とかいうシーンに出くわそうもんなら・・
もうね、おじさんニヤニヤが止まらない。

ポケモンGOにセリフイケメンというモンスターがいたら僕は血眼になって街を徘徊していただろうね。でも残念ながらニンテンドーはセリフイケメンというモンスターの存在を隠した。

こうして僕はセリフイケメンの名ゼリフを生け捕りすべく日夜パトロールしているのである。

かく言う僕の周りにも軽度のセリフイケメンと思われる奴は生息している。

しかし、しかしだ。

僕クラスになると彼らのような軽度のセリフイケメン程度に心はなびかない。
高校球児の前髪ほどにもなびかない。
彼らはセリフイケメンに似てセリフイケメンでは無い、ただの「ナルシスト」だ。

このようにセリフイケメンという種は一見世界中いたるところに分布しているように見えて、実はかなりの希少種であるという見立てをする必要がある。

そして彼らはその空気の読めなさから、予期せぬタイミングに予期せぬ角度からその語彙力を駆使した言葉を放り込んでくる。

ここで皆さんに報告がある。
何を隠そう、
僕はセリフイケメン被害者の1人なのだ。


26歳の8月、僕はホントだったら生涯忘れられなかったであろう失恋をした。
モーニング娘とかにいそうな感じの子だね~とか言われる自慢の彼女だった。


当時僕はギター講師をしていて、仕事はもっぱら夕方以降の出勤という毎日。

その日は夕方になると暑さもだいぶ和らぎ、過ごしやすくなっていた。
仕事に行こうと駅に向かう途中、勤務先の音楽教室から電話が入った。

「最初のレッスンの生徒さんが体調を崩して休むという連絡がありました」

ラッキー!
最初の生徒さん休みだから今日は1時間遅れでスタート。まだゆっくりしてられる~っ♪

ふいに時間が空いた僕は当時付き合っていた彼女の家に向かった。
当時彼女は僕の家から徒歩圏内の駅近くに住んでいた。
普段と同じようにスペアキーでオートロックを抜け、部屋の鍵を開けた。

すると

そこには知らない男がいた。


僕は思った。
「あ、部屋間違っちゃった。てへ」
そして急いでドアを閉めた。
冷静に考えてみる。
・・・いや、んなはず無い!
だってインテリア一緒やん!!

僕は思った。
「ド・・・ドロボーー!?」

逃しちゃいけない!
立ち向かわねば!!
僕はきっとこの日の為に筋トレをしてきたのだ!!

僕「おい、お前~
ここで何しとんねん!!

ドアを開け僕は叫んだ。
少し声が裏返ったがまぁ良いだろう。
しかし泥棒は逃げるでもなく部屋でタバコを吸った状態で僕に言った。

男「え、いや、あの・・・
どなたですか?

あ、失礼。
自己紹介がまだでしたね
・・・じゃない。

ノストラダムスでも予言出来ないこの展開。
僕はドロボーに身元を確認されているのだ。

しかし神は途方にくれる僕を見捨てなかった。
そこに女神が舞い降りたのだ。
「ただいま~」
彼女が買い物袋をぶら下げて玄関に現れた。
流れは変わった、これで2対1だ。
ドロボーめ、俺達が追い詰めてやる。
僕は彼女に言った。

僕「ちょ、なんかさ、知らん人おるねん」

しかし彼女に笑顔は無かった。
泥棒は僕を指差して彼女に言った。

泥棒「いやいや、てかさ、こいつ誰なん?」

・・・え?
なにこれ?

僕の脳裏に訪れたある違和感。
え、これってまさか・・・

彼女は僕を指差して重い口を開いた。

「いや、こんな人知らん」

彼女は記憶喪失になったのか!?
いや違う・・・神は死んだのだ。

今なら分かる。
僕は現在なら「ヤグる」と呼ばれる状況に放り込まれたのだろう。
彼女はまさしく「モーニング娘にいそうな感じの子」だったのだ!

ある日突然カオスな状況下に置かれた僕は、テリトリーを守るため公園で毛を逆立てる猫のように必死でもがいた。

僕「いや、俺らずっと付き合ってるやん!
昨日もここに来てたやん?」

僕の予想と反して泥棒が割って入ってきた。
彼は彼女に言った。

泥棒「おっ、お前なぁ!
彼氏と別れたって言ってたよな?

彼女は黙っている。

ここでまず最初の爆弾が投下された。



泥棒
「天秤座だからって男をハカリに掛けて良いってワケじゃないんだぞ!?」



・・・は?

ちょちょ・・ちょっと、あなた。
今何て言いました?
このピリピリした空気の中で

オトコをハカリに?
え?天秤座??何このピントズレ。
・・まさか・・・

で、で、出たァぁぁァぁ!!

こいつ・・・セリフイケメンだ!!

極限の精神状態の中、イキナリ横から「へい、お待ち~っ」とばかりに出された大トロに僕は困惑した。

彼女「ハカリになんて掛けてないし!」

天秤座発言から2人は意味不明な口論を続け、僕はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。

泥棒「もういいよ。ここにいたら頭おかしくなりそうだから俺もう帰る」

と言い残し、泥棒は部屋を去った。
しかし頭がおかしくなりそうなのはむしろ僕の方だ。

その後2人になった部屋で彼女に別れ話を持ちかけたが、なぜか逆ギレされるというカオスな展開に。
僕は「また今度ゆっくり話そう」と言い残して部屋を飛び出した。

この後仕事があるのだ。

駅に向かって歩いている道中、僕は泥棒に追いついてしまった。
無言で追い抜いた時、後ろから彼に呼び止められた。

泥棒「あの・・

振り返った僕に彼は言った。

泥棒「さっきは取り乱してしまってすみませんね。彼氏と別れたって聞いてたからつい・・・

僕は不思議とこの男に憎しみを感じなかった。
彼は彼なりに被害者なのだ。

セリフイケメンは予期せぬタイミングで予期せぬ角度から言葉を放り込んでくる。

僕は油断していた。
彼はまさしく本物だった。
真のセリフイケメンだった。

どうしてかって?

彼は最後に遠い目をしてつぶやいたんだ。

「夏・・・もうすぐ終わりますね」

・・・って・・・なんやそれっ!!


皆さんもお気をつけください。
セリフイケメンは思わぬ場所に潜んでいます。

そう、あなたのそばにも・・・
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コメント

40代前半  大阪府

2021/03/18 6:12

37.  >>36 優奈さん
なんか良い響きでしょ?(笑)
使う機会があれば好きなだけ使ってやってくださいね!

40代前半  大阪府

2021/03/17 1:06

36.  >>35 カジノさん
私の文章イケメンよりも
響きもかっこいいからね!笑
私もこれからはセリフイケメンを使わせてもらいます!
ありがとうございます(´˘`*)

40代前半  大阪府

2021/03/16 21:32

35.  >>34 優奈さん
「セリフイケメン」って言葉は僕が勝手に作った造語です!世間では誰も使ってないと思うので使用時は気をつけてくださいね^ ^

40代前半  大阪府

2021/03/16 14:36

34. セリフイケメンっていうんですね
文章イケメンって言ってました!

40代前半  大阪府

2018/03/07 1:26

33.  >>32 かずさん
いえいえ、長いのにたくさん読んでいただいてありがとうございます^ ^

先日職場に入ってきた新人がなかなかセリフイケメンになる素養のあるナイスガイであることに気がつきました。これからじっくりと育てて名言を引き出していきたいと思います。とりあえず新人くんのセリフを聞いてください

ひとりでいると、冬、しみるんすよね

50代前半  京都府

2018/03/07 0:04

32. 初めまして(^ ^)
何度もいいね!すいません。。

久しぶりに笑わせて頂きました(^人^)

天然モノのセリフイケメン…
目撃したら報告しますね!←要らんわ!ってw

あ、面白いので勝手ながらフォローさせて頂きますm(_ _)m

40代前半  大阪府

2017/05/06 19:35

31.  >>30 やまださん
長いのに読み切っていただいてありがとうございます^ ^
やまださんに読んでもらえるとは光栄ですね。
辛すぎる記憶も視点を変えたら、自分で言うのも何ですが面白い話になるもんだなぁと実感します。
また新作出来上がったらぜひ読んでくださいね!
コメントありがとうございます。

30代前半  千葉県

2017/05/06 18:45

30. くやしい。普段長文は避けて通っていたわたしが。
この色男の話術にやられ最後まで読み切ってしまった。

しかも普通に面白いのが悔しい。

30代後半  新潟県

2017/03/08 22:33

29.  >>28 カジノさん
たらしっぽいけどね

40代前半  大阪府

2017/03/08 20:18

28.  >>27 ゆんさん
コメントありがとうございます^ ^
長いのに読んでいただいて感謝です。
そうそうセリフイケメンかつマジイケメンとかホントにくいやつですよ~!神はイケメンに甘い世の中を作られたってことで 笑

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